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管理人の日々徒然&ジャンルごった煮二次創作SSアリ
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実はもう20近く「86 ーエイティシックスー」のSSを書きまくった。
といっても、どれも中途半端なものが多くて書ききってないけども。
支部に投稿しようかとも思ったんだけど、あちらはあちらで増えてきてるみたいなので、これはただの自己満足。

そんな中でも割と早くかけたものを一品投下。
タイトルはつけられたらつける。あとで。
とりあえずタイトルはなしで。

基本的に原作のイメージとか、作品の流れを崩したくないので、行間を埋める形の書き方しかできないけども(苦笑)

時系列てきにはEp.6の終章直前あたり。連合王国から帰ってきたあとのような感じで。
(ネタバレしっかりしてますので、原作読了のほうがいいかと)

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「シン!」
 連合王国から帰還後、グレーテに報告書を提出したレーナは窓の外を歩くシンの姿を見とめて窓から呼び止める。
「何をしているんですか? 明日から休暇ですよね? 帰る準備とかしなくていいんですか?」
 そう訊ねてしまったのも無理はない。
 シンが作業着姿にデッキブラシを肩に担いでいたからだ。
 基地にいる間は勤務服か搭乗服のどちらかを着ていたので珍しい姿だった。
 以前にセオが〈ヴァナディース〉にレーナのパーソナルマークを描いたときに同じ作業着を着ていたのは見たことがあったのだが。
「〈ジャガーノート〉の修理と整備が終わったので、洗ったところです。汚れついでに〈ヴァナディース〉を洗おうかと」
 連合王国では雪山での戦闘だった。
 基地に帰還後、改めて〈ジャガーノート〉を見るとかなり汚れていた。雨天での戦闘でも泥はねとかあったりして、それが乾ききるとそれはもう汚いのだが、雪による汚れはまた違うものだ。
 明日から長期の休暇に入り、一旦保護者である養い親の元へ帰ってから、シンたちは〈学校〉に通うために隣街の寮へと移動することになる。
 レーナの御料車〈ヴァナディース〉も雪まみれになり、乾いたものを見たらあちこち汚れていた。
 整備が終わったと聞いたので、それならばと〈ヴァナディース〉のところへ向かおうとしていたところだ。
「あ、あのっ、でしたらわたしもやります!」
 シンたちだって自分の愛機を自分で洗うのだ。
 だったら自分だってやらねばと意気込んで、窓枠から身を乗り出すように前のめりになる。
「それは構いませんが、レーナは報告書の類の提出は終わったんですか?」
 直属の部下である総隊長のシンや、副長のライデンの報告書をとりまとめて、さらに自身の戦闘報告書まで旅団長であるグレーテに提出しなければならないのだ。
 ここ数日執務室で書類仕事に忙殺されていたのは、何度か執務室に訪れたシンがよく知っている。
「さっきヴェンツェル大佐に提出してきたところです。大佐からもこれから休憩に入っていいと言われたので、是非やらせてください。私が乗る車両なのですから」
 それに、と続けた。
「このところずっと椅子に座りっぱなしで、身体を動かしたかったのです。ですから」
「わかりました」
 シンは微笑んで頷く。
「確かに、レーナもたまには身体を動かしたほうがいいかもしれませんね。一緒にやりますか?」
「はいっ!」
 いそいそと外へ向かおうとすると、シンが呼び止める。
「レーナ、まずは着替えてきてください。その恰好では汚れますよ」
「あ」
 レーナは着慣れた紺青の軍服姿だ。
 確かに、作業着姿のシンのように着替えるべきだろう。
「作業着とか持っているのですか?」
 こういうの、とシンは自分が着ているものを摘まんで示すが、レーナは首を振る。
 軍服は何着か替えを持ってはいるものの、あとはわずかな私服だけだ。
 連邦に来るときはそれで足りると思っていたし、必要なときには買い足せばいいと思っていたからだ。
「ちょっと待っててください」
 シンは持っていたデッキブラシを壁に立てかけレーナがいた窓枠に手をかけると、ヒョイッと乗り越えて音もなく床に足を降ろす。
 驚いて短く悲鳴を上げたレーナを見下ろすと、クスリと小さく笑った。
 声をあげてしまったのが気恥ずかしくて、上目遣いに軽く睨む。
「お、お行儀が悪いですよ、シン」
「見逃してください」
 笑いを含んだ声で答える背中を慌てて追いながら、鼓動が速くなった胸をそっと押えた。
 窓枠の位置はシンの頭よりも高いところにあった、手を伸ばせば届く高さではあったが、それを軽々と乗り越えてくるシンの身体能力の高さと、やんちゃなところが垣間見れたのが嬉しい。
 
 ―――こんなことが簡単にできてしまうんだ
 
 シンは自室に入るとすぐに出てきてレーナに作業着を手渡す。
「おれの予備で申し訳ないですが、これに着替えてください。ちゃんと洗濯はしてありますから」
「いいのですか?」
「ええ、少し大きいかもしれませんが、汚れてもかまわない服ですから、そのほうがいいでしょう」
「ありがとうございます。それじゃお借りしますね。ちゃんと洗ってお返ししますから」
 先に行っています、とシンが行ってしまうと、レーナは急いで自室に戻った。
 
 
「おー、シン。どこに行ってたんだよ」
 先に格納庫に来ていたライデンがバケツを持って歩いてくる。
「ああ、ちょっとな」
「いい天気だし、洗車にはもってこいな日和だな。しかし、やっぱり〈ヴァナディース〉はデケェな。洗い甲斐があるっつーか」
「そうだな」
 姿は見えないが車両の反対側からマルセルの声が聞こえる。
 彼もこの車両に搭乗するのだから、自分が洗うのは当然と張り切っているようだ。
 手の空いている者たち何人かが集まってきたところで、それじゃ始めるかとそれぞれが掃除用具を持つと軍靴のゴツイ足音が聞こえた。ただし、かなり体重の軽い足音だった。
「すみません。遅くなりました」
「大丈夫です。今からはじめるところ」
 走ってきたのだろう息を弾ませたレーナの声に振り返ると、シンは硬直した。
 ガックリと下がった肩の位置、何度も折り返したのだろう袖口から伸びた細くて白い腕。軍靴からはみ出ているズボン。
 何人かがレーナに気づいてシンと同じように唖然とした表情になっている。
 
「レーナ、どうしたよ、それ?」
 ライデンが頬をひくつかせて訊ねてくる。
 それ、というのが自分が着ているもののことを指しているのはわかったので、素直に答える。
「わたしもお手伝いしようと思っていたのですが、作業着とか持っていなかったのでシンにお借りしたのです」
「へー……シンにねえ」
 ニヤニヤ笑いながらライデンはシンを見たが、当人は顔を背けて肩を震わせていた。
「シン~?」
 何故だかわからないが笑われている。
 レーナはむくれながら体を傾けて顔を覗きこむ。
「……すみません。少し大きい、どころじゃなかったですね……」
 くつくつと笑い続けるシンの様子に、唇を尖らせながらも顔を赤らめた。
 
 
 遡ること少し前。
 自室に戻ったレーナはいそいそと着替えにとりかかる。
 アンダーシャツは持っていたので、それをまず着てから作業着を手に取った。
 シンが着ていた服だと思うとドキドキした。
 けれど、もたもたして遅れてしまってはいけないと、思い切って作業着を着たのだが。
「え……」
 ズボンの裾から足が出ない。肩もガックリと下がっているし、袖口から指先がかろうじて出る程度。
 アタフタしてとりあえず袖を折り返し、下がっているウエストの部分をベルトで締めてずり上げる。
 それでもズボンの裾が余ってしまう。
 全体的にブカブカだ。
「足、長い……」
 この作業着がシンにはピッタリ合っているのだから、それだけ体格が違うということだ。
 だというのに、バストとヒップ部分だけがそれほど余裕がないことに気づき、なんだか恥ずかしくなってしまった。
「ど、どうしよう……でも、急がなきゃ」
 自分からやると言ったのだ。
 これで遅くなってしまったのでは意味がない。
 軍靴をクローゼットから出して履き終えると急いで格納庫に向かったのだった。
 
 
 
「お前のだったのか。道理でデケェツナギだと思った」
「アンジュかクレナがいればよかったんだが、さすがに黙って借りるわけにはいかないだろ」
 この時点でレーナよりも若干背が高いだけのセオのものを借りることは選択肢にない。
 ブカブカな作業着ではあるが、自分で工夫して着こなしているようだ。
 そして真っ直ぐな銀髪をまとめて大きめのバレッタでとめているため細くて白いうなじが目に入り、微かに視線を逸らす。
「アンジュがたまにそういう髪型をしていましたが、レーナのは初めて見ました」
「あ、そうですね」
 レーナはまとめた髪に手をやる。
「さすがに邪魔になりそうだったので……似合いませんか?」
 レーナ自身は無意識だが、上目遣いに不安げに見上げられたシンは視線をさ迷わす。
「いえ、そういうわけではなくて………その、器用だな、と」
 そのやりとりを聞いていたライデン及びその周囲の面々は、あちゃーっと額に手を当てた。
 
―――そこはお前、似合ってるとか
―――可愛いとか言えよ!
 
 この朴念仁め! とその場にいる全員が似たようなことを思った。
「上のほうはおれたちがやりますから、レーナは下をお願いします」
「わかりました」
 頷きつつもレーナは洗車というものをしたことがない。今更どうやるのかなどと聞けはしないので、周囲の人々の行動を見よう見まねでなんとかこなす。
 大佐、こっちもお願いできますか、と声をかけられて動き回るレーナを〈ヴァナディース〉の上から見ていると、ライデンがトン、とデッキブラシを車体につく。
「ずいぶんと馴染んできたみたいだな、レーナ」
「ああ」
 着任した当初は共和国人だからと侮蔑のこもった目で見る者が大多数だったが、いくつかの遠征と戦闘を繰り返してきたことにより、その枠組みが外れたように見える。
 普段、シンたちがレーナを愛称で呼んで仲間扱いしているおかげでもあるのだろう。
 レーナを見るシンの眼差しは柔らかなものだ。
 連合王国ではなにやら酷く思い悩んでいたようだが、どうやらそれも解決したらしい。
 しかもレーナに対する想いも自覚したようだ。
 シンの口からはっきりとは聞いていないが、生きる目的も見出したようで、ライデンにとっても喜ばしいことだと感じている。
 
「さて、あとは水で流すだけだな」
「ああ」
 軍人として従軍しているとはいっても、まだまだはしゃぎたい年頃の少年たちだ。
 ホースで水を〈ヴァナディース〉にかけながらも、時々自分にかかる水しぶきに声をあげる。
 それを見ながら、レーナは女の子らしく自分にかかるのは嫌なので距離をとって眺めていると、シンが隣に並ぶ。
「綺麗になりましたね」
「ええ。気持ちよく休暇を迎えられそうな気がしますね」
「はい」
「シンは…………明日はお祖父様のお邸に行くのでしたよね」
「……はい。どんな話ができるのかはわかりませんが、会ってみようと思います」
「きっと、お祖父様は喜ばれますよ」
 そう言ってレーナは嬉しそうに笑う。シンが祖父に会うのを心から喜んでくれている。
「その後で、おれたちは休暇中は〈学校〉に通わねばなりませんが、レーナはどうしますか?」
 彼女にはもう家族がいない。帰る場所もない。
 共和国へは帰らないだろうし、できることなら自分が一緒にいられればとは思うのだが。
「わたしは」
 
「貴方たち、お疲れ様」
「お疲れ様です」
 その場に二人分の足音が聞こえてくる。
 軍靴ではない軽い足音の正体は機動打撃群旅団長グレーテと、何故か今日こちらに顔を出していたヴィレム参謀長の二人だった。
 姿勢を正して敬礼すると、参謀長は楽にするようにと手で示す。
 グレーテはレーナに気づくと首を傾げる。
「ミリーゼ大佐、休憩に入ったものだと思っていたのだけれど……見慣れない恰好をしているわね」
「す、すみません。シ…ノウゼン大尉たちが〈ヴァナディース〉を洗うというので、私も手伝おうと思いまして」
「咎めているのではないのよ。休憩に入っていいと言ったのは私だし、休憩中なのだから好きなことをしていいのだもの。なんというか、可愛らしいわね。その作業着が誰のかとは訊かないけれど」
 微笑ましいものを見る目でレーナを見てから、シンにチラリと視線を向ける。
「そういえば、明日から休暇だったか。しばらく乗る機会もないのだから、整備と清掃は大事だな」
 参謀長は〈ヴァナディース〉を見上げてから視線を戻す。
「確かに、ヴェンツェル大佐の言う通り、なかなか似合っているな、ミリーゼ大佐」
「あ、ありがとう、ございます?」
 純血の〈夜黒種〉の目がレーナからシンへと向けられる。
「なんだ大尉、何か文句でもあるのか」
「いえ、別に」
「自分が上手く褒められなかったのに、私を睨むのはお門違いというものだろう」
 見透かされたように、フン、と鼻で笑われ、シンはむっつりと黙り込む。
「ところでミリーゼ大佐、さっき貴女にこれを渡すのを忘れていたのよ」
 グレーテがタブレットを手渡す。
 レーナの執務室に連絡を入れたのだが本人がいなかったため、グレーテが直接持って探しにきたのだろう。
「すみません、お手数をおかけしまして」
「それ、よく読んでちょうだいね」
「はい…………………? あ、あのっ、ヴェンツェル大佐、これって…………特士校の学校要綱だと思うのですが」
「ミリーゼ大佐、貴官には休暇中は特士校へ通ってもらう」
「え、わたしがですか!?」
 シンたちエイティシックスは従軍の際、特士校へ通うことが義務付けられている。あくまでも士官として従軍することを求められているためだ。
 共和国軍からの出向という形で連邦軍に所属しているレーナであって、連邦軍の士官学校に通う必要などないと思うのだが。
 さらに言えば……
「わたし、一応高等教育課程は修了しているのですが……」
 高等教育どころか大学課程も数年前に飛び級して修了してしまっているのだが。
 そんな自負もあって言ってみたのだが、参謀長は至極真面目な顔をしてのたまった。
「貴官が幼くして大学まで飛び級で修了したのは知っている。しかし、連邦の士官学校で学んだことはないだろう?」
「それはそうなのですが……」
「客員士官ではあっても連邦軍に所属している形なのだから、連邦の士官学校へ通って勉強してみるのも悪くはないと思うが」
「そう、ですね……」
 一月という長い休暇だ。
 その間、何もすることがないし、どこにも行くところがない。
「わかりました。確かにいい経験になると思いますし、行ってみたいと思います」
 それに、以前シンに聞いたように、学校で「料理」を習ってみようと思う。これからは家事も学んでいかなければならないと思っていたこともある。
「一応、私からノウゼン大尉と同じ学校に通えるように頼んでおいたから、学校では大尉にいろいろと教えてもらうといいわ」
「え、シ、大尉と同じ学校ですか?」
 思わず傍らに立つ少年を見上げると、微笑み返してくる。
「それならよかった。おれが学校を案内します。それと「料理」を習ってみたいと言ってませんでしたか?」
「はい。それに、この前フレデリカにも言われたのです。家事もできるようになったほうがいいって、わたし、その家事もろくにできないので………将来、困ることになるぞと言われてしまいまして」
 タブレットを持ったまま、もじもじと恥ずかし気に言うので、レーナがお嬢様育ちだと察していた周囲は納得したように頷いた。
「手続きは終わっているから、ノウゼン大尉たちと共に学校の寮に移動するように」
「了解しました」
 グレーテと参謀長が行ってしまうと、レーナは息を吐いた。
「レーナ?」
「よかったです………休暇中、何をしようかと思っていたので」
「そうでしたか……」
 少しだけ寂し気に笑う様子に、やはりそうだったかと思う。
「帰る場所はありませんし、どこに行っていいのかもわかりませんし……もしかすると、ヴェンツェル大佐や参謀長は、それを察してくださったのかもしれません」
 グレーテならもしかしたらそうかもしれないが、あの参謀長に限ってそれはないような気がするが。
「学校に通っている間に、少しでも家事ができるようになりたいと思います。もちろん勉強もですけど」
「そうですね」
「それにしても、何故フレデリカが家事ができないことを心配してくれるのでしょう? わたし、フレデリカにはあまり好かれていないと思っていたのですが」
 首を傾げるレーナにライデンたちは苦笑いになる。
「あー、あんまり気にしねえほうがいい。フレデリカのあれはヤキモチだから」
「ヤキモチ、ですか?」
「わかんねえならいいって。フレデリカは本気でレーナのことを嫌ってるわけじゃねえから」
 そう言ってライデンはチラリとシンを見る。
 その視線の意味をわかっていながらシンは素知らぬフリをした。
「そうだ、レーナ、家事はできるだけ頑張ってくれよ。特に料理!」
 ライデンの真剣な眼差しに、レーナはコクコクと頷いた。
「わかりました。頑張ります」
「シンにはぜってぇ料理させんなよ! 頼むから」
「そういえば、前にシンから聞いたことがあります。料理当番からは外されてたって」
「そう! 包丁で捌くのは巧いから、野菜とか肉とかは切らせてもいい。けど、味付けだけは駄目だからな!」
「わ、わかりました」
「それと、シンは家事もかなり大雑把だから、レーナに頑張ってもらうしかねえからな!」
「は、はいっ」
「酷い言われようだな……」
「事実だ事実!」
 
 そんなやりとりを周囲で見ていた少年たちは、何故ライデンが将来を踏まえた話をレーナにしているのか察して、笑い出したいのを必死にこらえていたのだった。
 
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