管理人の日々徒然&ジャンルごった煮二次創作SSアリ
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桐青戦のあとで
群馬の三橋本家でもそうだったが、男の子の部屋ってこんなものなのだろうか。
瑠里は久しぶりに訪れた埼玉の従兄の部屋を見て嘆息した。
部屋の広さはこちらのほうが断然に広いが、勉強机(であるはず)の上にはノートや参考書がまるで使われていないように散乱し、ベッドの周りには空のペットボトルや雑誌類が投げ出されたように置いてあり、部屋のあちこちには野球ボールが転がっている。
一緒に住んでいた中学時代と違うのは野球ボールが軟球から硬球に変わっていることぐらいだろうか。
ベッドで昏々と眠る廉の顔を覗きこんで、瑠里はそっと嘆息した。
電話では話をしていたけれど顔を合わせるのは三星の中等科を卒業して以来だというのに、眠ってばかりでは話もできやしない。
「いろいろと話したかったのになあ」
中学では全然活躍していなかったはずなのに、今日の廉は予想を裏切っていた。
二回戦とはいえ、西浦高校野球部にとっては公式戦初戦だ。その初戦の相手が昨年の甲子園出場校だなんて運が悪いとしか言いようがない。
きっと初戦敗退にちがいないと思い、母校である三星の初戦を捨てて応援に駆けつけたのだ。
だが、ほぼ三年ぶりに見た廉のマウンド上での姿に驚かされた。
高校に入学していきなり野球が上手になったのか、それとも元々上手かったのか。
そういうことも聞きたかったのに、廉は瑠里がいることに気づいているのかいないのか、帰宅して母親に起こされると、風呂に入って昼食を食べ終えると早々にベッドで眠り込んでしまった。
「仕方ないかあ、頑張ったもんね、レンレン」
廉は野球が飛びぬけて上手いわけではない。総合力では叶のほうが上手いはずだ。
だけど投げることが大好きで、いつも頑張っていたことは知っている。
瑠里の家に住んでいたときも、広い庭に九分割されたマトを作って毎日のように投げ込んでいた。
だから中学時代はなんであんなに頑張っているのに活躍できないんだろうとずっと思っていた。
よほどヘタクソなのかと思っていたのだが…
「ホント、びっくりしたんだから」
ツン、と鼻の先をつつく。
すると廉はむずがゆく感じたのか顔をしかめると寝返りをうち、そばに転がっていたボールを無意識に握った。
それを見て相変わらずだと思った。
いつも野球ボールを持っている。
瑠里も足元に転がっていたボールを拾い上げた。
「硬球……当たったら、痛そう…」
そういえばデッドボールでお尻にボールが当たっていたはずだ。当たった箇所が良かったからか、骨とかには異常はなさそうなのでよかった。
「そういえば、すこしたくましくなったのかな?」
中学に入学したころは背丈はほぼ変わらなかったのに、やはり男だからか、中学三年のころには廉のほうが大きくなっていた。
それでも西浦のチームメイトに比べると背が低くて細っこいが、他のメンバーもまだまだ少年ぽさが抜けない体つきで、これからまだまだ成長していくのだろう。
「なんか大きくなった姿って想像つかないかも。レンレンのくせに」
もう一度鼻をツンツンとつつく。
「くやしいなぁ、男の子ってすごいなぁ」
この年頃の男の子の成長速度は目をみはるものがある。
でも、一緒に住んでいたら気づかなかったかもしれない。
それに……
「レンレン、やっぱり三星に行かなくてよかったのかも……」
叔父夫婦はもちろん、祖父母に自分の両親も三星の高等部に進むことを強く勧めた。
瑠里だって例外ではない。
けれど廉は頑として首を縦に振らなかった。
三星を出てよかったのか。
いつも瑠里はそう思っていた。
野球部に入ったっていうけど、チームメイトと上手くやれてるかな。友達できたのかなとか。
けれど、今日の試合を見てよかったと思った。
中学に入ってから少しずつ笑顔を失っていった廉。
心配すればするほど廉は逆に心配をかけまいと内に籠もっていくみたいで、瑠里ができたことはいつも変わらぬ態度で接することだった。
埼玉に戻って西浦高校に進学すると聞いたときは寂しかったけれど、今の廉を見たらこれでよかったのだと思えた。
満面の笑顔ではないけれど、チームメイトに囲まれている廉は三星にいたころよりもずっと生き生きとして見えた。
今まで知らなかった廉を知ることができた。そんな新鮮な気持ちを味わえた。
眠りが深いのか、すぅすぅと寝息をたてる廉の耳元でそっと囁く。
「廉……今日の廉はすごくカッコよかったよ」
また見に来たい。
勝つ試合だろうと負ける試合だろうと関係ない。
レンレンはどう思うかな。
いいもん、来ちゃダメって言われたってこっそり見に行ってやるんだから!
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というわけで「おおきく振りかぶって」のレンルリ書いてみました。
そうそう、「おお振り」では私の推奨CPはレンルリとアベチヨですので。
桐青戦のあとで
群馬の三橋本家でもそうだったが、男の子の部屋ってこんなものなのだろうか。
瑠里は久しぶりに訪れた埼玉の従兄の部屋を見て嘆息した。
部屋の広さはこちらのほうが断然に広いが、勉強机(であるはず)の上にはノートや参考書がまるで使われていないように散乱し、ベッドの周りには空のペットボトルや雑誌類が投げ出されたように置いてあり、部屋のあちこちには野球ボールが転がっている。
一緒に住んでいた中学時代と違うのは野球ボールが軟球から硬球に変わっていることぐらいだろうか。
ベッドで昏々と眠る廉の顔を覗きこんで、瑠里はそっと嘆息した。
電話では話をしていたけれど顔を合わせるのは三星の中等科を卒業して以来だというのに、眠ってばかりでは話もできやしない。
「いろいろと話したかったのになあ」
中学では全然活躍していなかったはずなのに、今日の廉は予想を裏切っていた。
二回戦とはいえ、西浦高校野球部にとっては公式戦初戦だ。その初戦の相手が昨年の甲子園出場校だなんて運が悪いとしか言いようがない。
きっと初戦敗退にちがいないと思い、母校である三星の初戦を捨てて応援に駆けつけたのだ。
だが、ほぼ三年ぶりに見た廉のマウンド上での姿に驚かされた。
高校に入学していきなり野球が上手になったのか、それとも元々上手かったのか。
そういうことも聞きたかったのに、廉は瑠里がいることに気づいているのかいないのか、帰宅して母親に起こされると、風呂に入って昼食を食べ終えると早々にベッドで眠り込んでしまった。
「仕方ないかあ、頑張ったもんね、レンレン」
廉は野球が飛びぬけて上手いわけではない。総合力では叶のほうが上手いはずだ。
だけど投げることが大好きで、いつも頑張っていたことは知っている。
瑠里の家に住んでいたときも、広い庭に九分割されたマトを作って毎日のように投げ込んでいた。
だから中学時代はなんであんなに頑張っているのに活躍できないんだろうとずっと思っていた。
よほどヘタクソなのかと思っていたのだが…
「ホント、びっくりしたんだから」
ツン、と鼻の先をつつく。
すると廉はむずがゆく感じたのか顔をしかめると寝返りをうち、そばに転がっていたボールを無意識に握った。
それを見て相変わらずだと思った。
いつも野球ボールを持っている。
瑠里も足元に転がっていたボールを拾い上げた。
「硬球……当たったら、痛そう…」
そういえばデッドボールでお尻にボールが当たっていたはずだ。当たった箇所が良かったからか、骨とかには異常はなさそうなのでよかった。
「そういえば、すこしたくましくなったのかな?」
中学に入学したころは背丈はほぼ変わらなかったのに、やはり男だからか、中学三年のころには廉のほうが大きくなっていた。
それでも西浦のチームメイトに比べると背が低くて細っこいが、他のメンバーもまだまだ少年ぽさが抜けない体つきで、これからまだまだ成長していくのだろう。
「なんか大きくなった姿って想像つかないかも。レンレンのくせに」
もう一度鼻をツンツンとつつく。
「くやしいなぁ、男の子ってすごいなぁ」
この年頃の男の子の成長速度は目をみはるものがある。
でも、一緒に住んでいたら気づかなかったかもしれない。
それに……
「レンレン、やっぱり三星に行かなくてよかったのかも……」
叔父夫婦はもちろん、祖父母に自分の両親も三星の高等部に進むことを強く勧めた。
瑠里だって例外ではない。
けれど廉は頑として首を縦に振らなかった。
三星を出てよかったのか。
いつも瑠里はそう思っていた。
野球部に入ったっていうけど、チームメイトと上手くやれてるかな。友達できたのかなとか。
けれど、今日の試合を見てよかったと思った。
中学に入ってから少しずつ笑顔を失っていった廉。
心配すればするほど廉は逆に心配をかけまいと内に籠もっていくみたいで、瑠里ができたことはいつも変わらぬ態度で接することだった。
埼玉に戻って西浦高校に進学すると聞いたときは寂しかったけれど、今の廉を見たらこれでよかったのだと思えた。
満面の笑顔ではないけれど、チームメイトに囲まれている廉は三星にいたころよりもずっと生き生きとして見えた。
今まで知らなかった廉を知ることができた。そんな新鮮な気持ちを味わえた。
眠りが深いのか、すぅすぅと寝息をたてる廉の耳元でそっと囁く。
「廉……今日の廉はすごくカッコよかったよ」
また見に来たい。
勝つ試合だろうと負ける試合だろうと関係ない。
レンレンはどう思うかな。
いいもん、来ちゃダメって言われたってこっそり見に行ってやるんだから!
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というわけで「おおきく振りかぶって」のレンルリ書いてみました。
そうそう、「おお振り」では私の推奨CPはレンルリとアベチヨですので。
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