忍者ブログ
管理人の日々徒然&ジャンルごった煮二次創作SSアリ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

またもやこそこそと某作品の二次創作。
アニメ二期がもうすぐ終ってしまう~。
アニメ一期もう一度見たい。

拍手


============================================

君の笑顔が見れるなら
 


 バタバタと廊下を走る音が聞こえたかと思うと部屋の扉が勢いよく開いた。

「レンレン! 高校…三星に行かないって…埼玉に帰るってホント!?」
 ほとんど使ってもいなかった勉強机に座っている廉を見た瑠里は祖父母が言っていたことは本当なのだと悟った。
 夏が終わり、三年生は形式上野球部を引退した形になり、公式戦に出場することはない。練習にも出る必要はないけれど、三星は中等部から高等部にエスカレーター式に進学することになるので、受験勉強とは無縁だ。
 だからこそ部活は引退しても練習には参加する三年生が多いのに、廉は練習には出なかった。
 自分が練習に出れば野球部員を不快にさせることはわかっていたし、投球練習だけなら家でもできるので問題はなかったからだ。
「なんで!? なんで、埼玉に帰っちゃうの? 三星なら学費タダだし、受験勉強だってしなくてもいいんだよ!?」
「嫌、なんだ!」
「え?」
 机の上でグッと拳を握りしめた廉は瑠里と目を合わせずに言った。
「も、もう…み、三星には行きたくない! 行ったら、オレ、ダメなんだ!」
「なんでよ…そんなに嫌なの? そんなにいたくないの? ここに…」
 この家に。
 両親と離れて暮らしているために、やっぱり里心がついているのだろうか。
 それとも高等部に入ったら寮に入らなければならないからだろうか。
 瑠里自身はあまり気にしていないが、いとこ同士とはいえ、同い年の男女が同じ家に住むのは良くないというのが三橋家の大人たちの意見で、すでに決定事項なのだから仕方がないし、廉だってそれは承知しているはずだ。
「ちがう、よ! この家は好きだよ! おじいちゃんたちも、おじさんたちも……ルリや、リューも……そうじゃなくて……オレが、三星に行ったら……ダメ、だからっ」
「なにがダメなのよ……ワケわかんないっ」
 三星学園は男子部と女子部で別れているので瑠里には野球部の事情は詳しく伝わってこないが、野球部がすごく弱いことは知っている。廉が野球部のエースでちっとも活躍していないことも。
 それが原因なのかなとチラリと思った。それともう一つ、廉の笑顔が全く見れなくなってなってしまったこともだ。
「……じゃあ、三星じゃなかったら、どこに行くつもりなの?」
「西浦ってところ…埼玉の県立の…」
「県立? 入れるの? レンレンの成績で」
 すると廉はブンブンと首を振った。
「む、難しいって……お母さん、が行ってたところ、だから」
「おばさんの高校?」
 廉の母、尚江は大学教授だ。おばが通っていた高校ということは、学力レベルは相当高いはず。
(む、無謀だ…)
 三星学園も学力レベルはそこそこにいい方だが、廉の成績は底辺に近い。
「西浦ダメだったら、三星に行けって…だから、勉強する」
 県立高校の受験日まであと半年もない。
 それでも諦めた様子を見せない廉に本気なんだと瑠里は思った。
「わかった」
 瑠里は自分の部屋から椅子をとってくると廉のそばに腰を降ろした。
「ルリ?」
 きょとんとした廉に参考書を広げてみせる。
「勉強、私がわかるところは教えてあげる。レンレンより私のほうが成績いいんだから」
「い、いいの?」
「いいの! 私は受験勉強する必要ないし、部活も引退したし、レンレンにつきあうくらいできるから。でも、これで落ちたりしたら絶対に許さないんだからね!」
「う、うん、あ、ありがと、ルリ」
 瑠里はほんの少しだけ嬉しそうに頬をゆるませた廉の顔にハッとしたが、慌てて参考書に視線を落とした。
「さ、やると決めたらしっかりやるわよ、レンレン!」
「――」
「ん? なに?」
「レンレンてゆーな…」
「あーはいはい」
 
 いつものやり取りをしつつ、瑠里はこっそりと廉の横顔を窺う。
 
 
 三星を出ることでレンレンの笑顔が見れるなら、私はそのほうがいいな――

 

==============================================
なんで三橋のことを「廉」と表記するのかというと、瑠里も「三橋」だからです。
あと瑠里目線が多いためかな。
PR

Template by Emile*Emilie
忍者ブログ [PR]