忍者ブログ
管理人の日々徒然&ジャンルごった煮二次創作SSアリ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

あったりして(笑)

実は結構前に書いてたものなのですが、最後まで書いてなかったので短めにおさめてみた。
当初の予定ではもっと長かったような気がする。

ゴロカオなんですけど、薫ちゃんは登場しません。
吾郎と寿也のみ。
読めばいつ頃の話なのかはすぐにわかると思う。

 

拍手


=================================================================

 
 
 
 待ち合わせの時間に遅刻しないようにと寮の自室を出かけたところで携帯電話が鳴った。
 ディスプレイを見ると相手はこれから会う約束をしている人物だった。
「吾郎くん?」
 以前の携帯電話はアメリカで盗まれたとかで、先日ようやく新しい携帯電話を買ったらしいのだが、よほどのことがないと電話などしてこないのが彼なので、都合でも悪くなったのだろうかと思って電話に出る。
「もしもし」
「おう、急に悪いな」
「いや、構わないよ。これから出るところだったんだけど、都合悪くなった?」
「そうじゃねーんだけどさ、今日は連れが一人いるんだけどいいか?邪魔はしねーと思うんだけど」
「それはいいけど、その連れって誰?僕の知ってる人?」
 珍しいこともあるものだ。
 こと野球に関してはマイペースというか唯我独尊といってもいい吾郎がわざわざ自分にお伺いをたてて連れてくる人物がいるとは。
 自主トレに連れてくるというくらいだから野球関係者なのかもしれない。
「もしかして小森くん?」
 小学生のころからリトルで一緒だった小森とは仲もよかったはずだ。いくらなんでも寿也が顔も知らない人物をいきなり連れてくるなんてことはしないだろう。
「小森じゃないけど、お前も顔を合わせたことはあるよ。リトルのときに俺と同じチームにいた女がいただろ?」
「ああ、彼女か、確か……清水さんっていったっけ?」
 直接喋ったことはないし、下の名前は知らないけれど、三船ドルフィンズでたった一人の女子として頑張っていたのは知っている。
「そうそう!その清水を連れてってもいいか?今は大学でソフトやってんだけど、運動が嫌いな奴じゃねーし、俺らの自主トレは邪魔しないって言ってるからさ」
「うん、いいよ」
 わざわざ連れてくるなんてよほど親しいんだなと思いかけてピンときた。
「もしかして、付き合ってるの?」
 吾郎と同じく野球バカといってもいい寿也だが、吾郎よりも繊細で人の気持ちにも聡いだけに気づくのが早い。
「あ、まあ、その、なんだ。ちょっと前からなんだけどな」
 照れくさそうに話す電話向こうの声に思わず笑みを浮かべた。どんな顔をしていることやら。
 
 
 プールで直接待ち合わせたのだが、彼女の姿はすでになかった。
「清水なら先に着替えに行ったよ。女のほうが時間かかるからな」
「じゃあ挨拶は後にしようかな。……それにしても意外だったよ」
「何がだ?」
 更衣室で着替えていると吾郎が首を傾げた。
「吾郎くんが女の子と付き合うなんてね。海堂にいたころは男女交際そのものにあんまり興味なさそうだったから」
「しょ、しょーがねーだろ!…………っちまったもんは」
 浅黒く日焼けした頬を赤くして、勢い良くシャツを脱いだ吾郎の最後の言葉は小さくてよく聞き取れなかったが、「好きになっちまったもんは」と聞こえたような気がした。
 そこは一応行儀良くスルーする。
 だがそこで思わぬ切り返しがきた。
「おまえのほうこそどうなんだよ?」
「え?」
「今年の新人王だろ? 女のファンだってたくさんいるだろ? イケメン寿くんは彼女だって選び放題じゃねぇの?」
「そうだね…ファンレターは増えたんじゃないかな?」
「ああそうかい」
「でも、今はまだいいかな。新人王は獲れたけど、来年は二年目のジンクスってやつもあるからね。当分は野球一本でいくつもりだよ。それに、僕だって付き合うなら本気で好きになった人がいいからね。吾郎くんみたいに」
 しかしそこはやはり寿也だ。
 ちょっとからかってやろうと思っていたであろう吾郎にさらに反撃する。
「バッ…おま、何言ってんだ! 俺のことはいいんだよ! つか、清水待たせてんだからもう行くぞ! あいつ本気で怒ったらめちゃくちゃこえーんだよ」
 照れたのを誤魔化すつもりか、それとも本気で彼女を怒らせることを恐れているか。
 吾郎は慌てて更衣室を出て行った。
 
 その後をついていきながら、ふと思った。
 
 
――吾郎くんは結婚したら意外と尻に敷かれるタイプかもしれない。
 

PR

Template by Emile*Emilie
忍者ブログ [PR]