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管理人の日々徒然&ジャンルごった煮二次創作SSアリ
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マガジン連載の「スマッシュ!」の二次創作SSです。
誰も読んでないと思うけど(笑)
「スマッシュ!」の推奨カプは吉塩です。
誰も知らないと思うけど(笑)

SSは続きから。

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「もしも…もしもの話なんだけど」
 
 塩田は数ヶ月前からつきあい始めた彼氏にそう切り出した。
 
 
 
 吉川が言うところの『親睦会』と称した三年生対一・二年生の団体戦が終った翌日のことだ。
 昨日は吉川が後輩と部室で話しこんでいたために一緒に帰ることができなかったので、今日は待ち合わせをして駅までの道を一緒に歩いていた。
 ここのところ推薦で入学が決まっていた大学でバドミントンの練習をしていた吉川は、何があったのかは知らないが、時間の都合がつくかぎりは後輩の指導のために東城第二で練習することにしたらしい。
 塩田にしてみれば一緒に帰れる機会が増えたのは嬉しいことだった。
 ようやく自分の想いが通じてつきあい始めたのに、彼はインターハイでの結果が評価されて進学先も決定したのでいままでと変わらずバドミントンの練習をしているし、自分は自分でいまだ進路が決まらない上にバドミントン部の練習にも参加しているので、一緒に帰れる日というのはあまりなかったのだ。
――それってつきあってるって言えるの?
 女子バドミントン部の三年生部員たちからはそう言われたが、たとえ会える時間が少なくても吉川は自分のことを大事にしてくれていると思うし、何よりも彼が高校卒業後、別の進路を選んだとしても、ずっとつきあいを続けていくつもりだということがわかっただけでも嬉しかった。
 
 そんなときだった。
 男子バドミントン部の『親睦会』なるもので、負けたほうが女子部員に告白するという罰ゲームが行われたのは――
 
 
「あのね、本当にそんなこと万が一にもあるわけないと思うんだけど、本当に、もしも……もしも三年生チームが負けていたら、吉川君は告白……してくれた?」
「はあ!?」
 隣を歩いていた吉川は素っ頓狂な声をあげた。
「何言ってんだ、お前、そんなことあるわけねーだろうが」
「え」
「オレたちが後輩連中に負けるわけねーってんだよ」
「あ、う、うん、そうだね……」
(よ、よかった……そういう意味で、ね)
 一瞬、心臓が止まるかと思った。
 だが塩田が訊きたいのはそういうことではない。
「だから、もしも、なの……私だって、吉川君たちが負けるわけないって思ってるけど、その……知りたくて……。もしもそんなことになったら、吉川君、告白してくれるのかなって」
 立ち止まって自分よりも背の高い吉川を上目遣いに見上げると、彼はうろたえたように視線を泳がせた。
「バッ…カ、それもありえねーだろ」
「そ、そう……」
 それを聞いて視線が足元に落ちた。
 じんわりと涙がにじんでくる。
(期待しすぎちゃダメよ! 照れ屋なところがあるし、こういうことは絶対に恥ずかしがる人だってわかってるじゃない!)
 困らせちゃいけない。せっかく両想いなれたのに、こんなことで嫌がられたくもない。
 謝ろうと顔を上げようとしたら、コツン、と額に何かあたった。
「!?」
 思わず額に手を当てて見上げると、優しく小突かれたのだとわかった。
「お前、昨日の翔太たち見てなかったのか?女がいる奴はビンタされてたろ」
「あ」
「だったら、オレは確実にビンタ組だろうが」
 照れくさそうに言った吉川に、塩田の頬も熱くなった。
「そ、そっか」
「おう」
 バドミントン部は建前上は恋愛禁止だ。部内恋愛などもってのほか。
 とは言うものの、「バレないようにやれ」という暗黙の了解ができあがっていて、実際にはつきあっているものもいる。一番顕著な例が一年生の東翔太と鬼頭優飛で、塩田などは仲の良い可愛いカップルで羨ましいと思っているほどだし、実際には前部長である吉川だって塩田と付き合い始めたのだから、恋愛禁止が徹底されているわけではないのは明らかだ。
 二人はつきあっているのを隠しているわけではないが公言もしていないので、知らないものもいるだろうが吉川はつきあっている彼女がいるということは隠すつもりはないらしい。
「昨日のアレでお前とつきあってるのが後輩連中にもバレたしな」
「そうだね」
 昨日、久我山が告白しようとしたときの吉川の怒りはハンパではなかったらしい。基本的に怖いもの知らずの美都でさえ、「あんなに怒ってる吉川見たことないよ~。怖かった~!」と言った。
 不謹慎だとは思うのだが、それを聞いて嬉しかったのは吉川には黙っていようと思う。
 女子部の一、二年生など、「吉川先輩のどこがいいんですか?……い、いい人だとは思いますけど……」と言っていた。
 塩田の場合は「ちょっと怖いところもあるけど、いい人ですごくカッコいい」なのだが、他の人は「いい人だとは思うけど、怖いよね」なのだ。
 それでいいと思う。
 吉川がカッコいいと思うのは自分だけで十分だ。
 
 だってライバル増えたら困るもの。
 
 再び歩き出した吉川について歩き出すと、そっと小突かれた額に手を当てた。
 あんな風に小突かれたのは初めてだ。
 でも、それがまた嬉しい。こんなことを言ったら友人たちには「あんただけよ、そんなこと言うの」と言われるのだろうが。
「あ、悪かった。痛かったか?」
「ううん、平気」
 慌てて首を振ったが、もっと触れてほしいと思ってしまう。
 この前初めて抱きしめられたが、照れ屋な彼はめったに手も繋いでくれなくてちょっと物足りないと思うことがある。
――たまには塩田のほうから積極的にいったらどうなのよ
 バド部の友人たちからはそう言われるものの、吉川相手にそれは難しい注文だ。
 彼は奥手というわけではないだろうが、人前でベタベタするのは嫌がるだろうし、塩田だってそういうのは好きじゃない。
(でも、ちょっとくらいなら……)
 ポケットに手を突っ込んであるく吉川のブレザーの袖をちょんと摘む。
「なんだ?」
「あ、えっと……ごめん、なんでもないの」
 手を繋ぎたいと言えばよかったのだろうが、慌てて離してしまった。
「……」
「あ」
 すると吉川のほうから手を延ばして塩田の手をとって歩き出した。
 温かく、サラリとした感触の大きな手に包まれて、頬が熱くなった。
「言いたいことがあるならハッキリ言え」
「ご、ごめんなさ」
「オレができることなら、なんだって聞いてやるから」
 その言葉に胸が甘く痛んだ。
 彼のこういうところが同級生や後輩達に慕われる一因なのだろう。
 ガッチリした肩に心もち頬を寄せる。
「あのね」
「ん?」
「こうして、歩きたかっただけなの」
「そ、そうか」
 横顔を見上げるとそっぽを向いていたが、街灯などの街の明かりのおかげで耳まで赤くなっているのがよく見えた。
 
 駅まであと少し。
 
 今だけは駅が遠くなればいいのに。
 
 そんなことを思いながら歩く晩秋のある日のことだった。


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こういうカプはものすごく好き。
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