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管理人の日々徒然&ジャンルごった煮二次創作SSアリ
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最近、すっかり話題がないので、ツバサナSSばかりになってます(笑)
根っからのC翼ファンなのですが、10年周期くらいで再ハマりするのを繰り返してますね~(苦笑)なんでだろ?なんだかんだいって好きなんだろうとは思ってますが。

今月末に某資格試験があるので、勉強してるんですけどね。

今回は「ROAD TO 2002」の初っ端のあたり。
ハワイ合宿の話です。
合宿とはいえ、新婚旅行を兼ねていたに違いないと推察して。



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 夕焼けに染まる海岸を二人で歩く。
「この辺りって静かねぇ」
 昼間のTシャツとハーフパンツ姿から、薄い水色のノースリーブのワンピースに着替えた早苗は、翼の数歩前を歩く。
「観光地から離れた場所らしいしね。ホテルとかショッピングできるところもないから普通の観光客はここまで来ないんだって」
 
 FCバルセロナとの契約を終えた翼はハワイに自主トレに来ていた。
 結婚式を終えて入籍も済ませた妻、早苗も同行している。
 自主トレのために作ったトレーニングチームのスタッフでもあるからだ。
 それでなくても、このハワイ合宿は新婚旅行も兼ねてはいたが。
 そんな二人に気をつかってか、自由時間になると皆が二人きりになるようにしむけていた。
 わざわざ気をつかってくれなくてもいいのに、と翼と早苗は苦笑した。別にそんなことしなくても、二人が寝泊りするコテージだけは別棟になっているし、この合宿が終わったら二人だけ数日間ほど残って新婚旅行を楽しむことにしているのだから。
「食料の買出しにはちょっと不便だけど、こういうところっていいわよね」
「でも、一年中いたいとは思わないなぁ。暑いよ」
「あら、翼くんは暑さには慣れてると思ってましたけど?」
「そりゃ慣れてるけどさ。でも、やっぱり暑いって思うし、どうせならもっと涼しいところがいいじゃないか」
「そうよねぇ。陽射しも強いものね。私なんて日焼け止め塗ってるはずなのに、なんだか焼けちゃったような気がするの」
 結婚式があるから日に焼けないようにといろいろと気をつかった上に、ブライダルエステのおかげでずいぶんと綺麗な肌になった腕を早苗は眺めた。
 その早苗の腕を無造作にとった翼は自分の腕と比べてみる。
「そうかな?…夕陽のせいでよくわかんないけど……おれよりは白いね」
「当たり前じゃないの。翼くんと比べないでよね」
 年中日に焼けてるようなものじゃないのと早苗は言う。
「やっぱり日焼け止めを何回も塗らないとダメね。気をつけてはいるんだけど」
「そんなに気にしなくてもいいじゃないか」
「イヤよ!」
 無頓着なことを言う夫に早苗は唇をとがらせる。
「腕だけ焼けちゃったりするのって間抜けっぽいじゃないの!」
「そういうものかな?」
 と翼は首を捻る。
 サッカー選手でも腕や足だけ日に焼けていて体のほうは焼けずにいる選手もたまにいる。翼自身はそれほどでもないが。
 そういうところはやはり男よりも女のほうが気にするものなのだろう。
「ん?」
 そこで気づいた。
「それじゃあ、体のほうは焼けてないんだ?」
「そうね……って、何想像してるの!?」
 翼の視線が早苗の顔よりも下に移動している。
 早苗は服を着ているにも関わらず、手で体を隠すような仕草をした。
「あ、いや…アハハ」
「…翼くんのエッチ」
 たとえ夫婦になったとはいえ、恥ずかしいことは恥ずかしいのである。
 早苗はぷぅと頬を膨らませると翼から逃げるように二三歩後ずさった。
 そのとき、足を砂にとられて体が傾いだ。
「きゃっ」
「早苗ちゃんっ」
 後ろに倒れそうになった早苗に翼が咄嗟に手を伸ばす。早苗の胴に手を伸ばしてそのまま引っ張った。
 とすん、と翼の胸に飛び込んだような形になった早苗はなんとか自分で体勢を立て直した。
「ダメだよ。気をつけなきゃ」
「あ、ありがと……ん?」
 早苗は翼の腕に触れていた手で目の前の逞しい胸板に触れた。ペタペタと触ってから夫の体に腕を回す。柔らかな体が胸から腹部にかけて押しつけられた。
「早苗ちゃん?」
 早苗のいきなりな行動に面食らった翼は空いた両腕を宙にさ迷わせる。
 めったにない妻からのスキンシップにどう対応すべきかと思ったら、早苗が感嘆の声をあげた。
「わー、やっぱり自主トレの成果ねー。無駄なお肉がとれたって感じ~」
「む、無駄なお肉…?」
「あ、ぜい肉って意味じゃないわよ。必要な筋肉がついて、引き締まった感じがするの」
「え、ホント?」
 自主トレを始めて毎日細かい数値を記録してはいるものの、その成果がまだ目に見えないので翼自身ではよくわかってはいなかった。
「うん、こうしてみるとよくわかるわよ」
 きゅむっと抱きついてくる早苗の表情は嬉しそうだ。
 トレーニングの成果が出てきているのがわかって嬉しいのだろう。
 翼も早苗のほっそりした体を抱きしめ返した。
 そのまましばらくの間お互いを抱きしめあった。
 翼と早苗は普段から人前ではあまりベタベタするほうではない。
 特にこの自主トレ合宿ではチームスタッフの目があるので、二人とも中学時代のキャプテンとマネージャーのような関係に戻っていたような気がする。
 幸い、この砂浜には人っ子一人いない。誰の目も気にすることなくイチャイチャしたって気にならない。
 
 空がオレンジ色から紫色に変わりかけたころ、早苗が身じろぎした。
「ね、ねぇ、翼くん。暑くない?」
「うん、そうだね」
 そう答えを返すものの、翼は一向に早苗を離す気配はない。
 早苗はどうしようかと思っていた。翼が抱きしめてくれるのは嬉しいのだが、このままずっとこうしていられるわけではない。
 身動きしてみようにもがっちりと捕えられているので動くことすらままならない。
「あのね、翼くん」
「うん?」
 早苗が翼を見上げると、首を傾げる夫の目はいたずらっぽく輝いていた。
 わかっていて離してくれないのだ!
 それを悟った早苗はジタバタと暴れはじめた。
「もうっ、離してってばー!」
「やだ」
 翼はクスクスと笑いながら早苗がふりほどこうとする腕を上手く絡めて離そうとしない。ある意味、体術には長けているといってもいいだろう。
「やだじゃなくってー!」
「わかったよ」
 翼があっさりと手を離すと、早苗は拍子抜けした顔になる。
「じゃ、帰ろうか」
 砂浜を歩き始めた翼の背中を追って早苗は歩き始めた。
 離してほしいとは言ったが、あっさりと離されると逆に寂しくなってしまった。
 
 こうして背中を見ながら歩くと中学時代を思い出す。
 あのころは溢れそうになるような想いを抱えて背中を見つめていたものだ。
 でも今は…
「早苗ちゃん」
 翼は振り返ると早苗に手を差し出した。
 その手を握り返して肩を並べて歩き出す。
「翼くんって、時々いじわるよね」
「そうかもね」
 否定しない翼を見て頬をふくらませた。
「でも、こんなことするのは早苗ちゃんだけだよ」
 
 真っ赤になって慌てたり困った顔をしたり。
 くるくると表情の変わる早苗を可愛いと思う。
 別にいじわるするつもりなんかないのだけれど、自分の行動で早苗の表情が変わるのを見ているほうがいいからついやってしまうのだ。
 
 ちょっと体をかがませて、早苗の唇に自分のそれを押し当てる。
「もう…」
 早苗は困ったような怒っているような表情で翼に寄り添う。
 ほら、こんな風に許してくれるから、ついいたずら心を起こしてしまう。
 もちろん、本気で怒らせるようなことはしないけど。
 鼻先をくすぐるいい香りに、翼は早苗を見下ろす。
 香水、もしくはシャンプーの香りだろうか。
「何?」
「ん…」
 つないでいた手を離すとほっそりとした腰に腕を回して引き寄せた。
「つばさく…ん…」
 先ほどよりもしっかりと唇を重ね合わせて柔らかな唇を吸った。
「今日はさ…」
「…ん?」
 合宿に入る前よりも逞しくなった腕に体を委ねる早苗の耳もとで囁く。
 なんとなく大きな声では言いにくい。
「もっと…仲良くしようか?」
 夫の遠まわしな言葉に早苗は沈んでいく夕日よりも赤くなった。
「え…あ、うん…」
 早苗はゆっくりと背伸びをして翼の耳元に唇を寄せる。
「夕ご飯…食べ終わってからね?」
 妻の答えに破顔して、翼は早苗を抱き上げた。
「きゃあ!」
 そのまま歩き出すと、早苗は嬉しそうなそれでいて困ったような顔になる。
「つ、翼くんっ」
「早苗ちゃん軽すぎるよ」
「そんなことないわよ」
「ん~、やっぱり筋力ついたかなぁ?」
 お姫さま抱っこされたままの早苗は体が揺れるので、翼の首に腕を回した。これくらいは恥ずかしがらずにできるようになったのである。
 体が密着すると翼は抱えた早苗を見下ろす。
「やっぱり痩せたんじゃない?」
「え、そうかしら…ここのところ忙しかったから…」
「おれとしてはもう少しお肉つけてほしいなぁ」
「…もう、翼くんのエッチ!」
 早苗は眉をつりあげて足をばたつかせた。
「おろせー!」
「やだよー!」
「今日はもう仲良くしないー!」
「え、ウソ!?」
 
「…………ウ・ソ」
 
 早苗はクスリと笑って夫の耳もとで囁いた。
 
 
 
「このまま、もっと仲良くなろうね」
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