管理人の日々徒然&ジャンルごった煮二次創作SSアリ
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C翼の二次創作SSは割とあります。
松美もあるよ!
ってことで、需要はないと思うけど、自己満足のためにUPしておく。
ただし、10年前に書いたものなのでご了承ください。
私の一押しキャラは松山くんですから!
私のイメージでは松山くんはこういうキャラって感じ。
拍手&コメントありがとうございます。
ツバサナでいただけるとは思わなかったですが、お気に召していただけたのなら嬉しいです。
ツバサナ好きさんがいてくださるだけでもいい。
松美だけじゃなくて、岬あづもあるんだけどね~。
松美もあるよ!
ってことで、需要はないと思うけど、自己満足のためにUPしておく。
ただし、10年前に書いたものなのでご了承ください。
私の一押しキャラは松山くんですから!
私のイメージでは松山くんはこういうキャラって感じ。
拍手&コメントありがとうございます。
ツバサナでいただけるとは思わなかったですが、お気に召していただけたのなら嬉しいです。
ツバサナ好きさんがいてくださるだけでもいい。
松美だけじゃなくて、岬あづもあるんだけどね~。
【春待ちの風】
四月。
北海道ふらのでは、まだ雪が残っているところが多く、桜が咲くのもあと一ヶ月は先だ。
それでもふらの市立ふらの中学校では新年度の始業式と入学式が行なわれた。
「美子、そろそろ部活決めたほうがよくない?」
「うん、そうね」
入学式から二週間。
新入生たちはそろそろ自分たちが所属する部活動を決めはじめている。
もちろん、まだ仮入部扱いなのだが、ふらの中学校では生徒全員が何かしらの部活動に参加することを義務付けられている。
藤沢美子と町田町子はいくつかの部を見学して回っていたのだが、これといった決め手がなく迷っていた。
「町子、入りたい部があったら私に遠慮しないでいいから」
「美子に言われなくてもそうするつもりなんだけどね。なんかこう…ピンとこないのよね」
運動部って柄でもないし…などと町子と話していると、廊下の向こうから騒ぎながら歩いてきた男子生徒数人の一人とぶつかった。
「きゃっ」
美子は足をよろめかせて町子にぶつかる。
「美子っ」
町子は慌てて腕を出して美子が倒れるのを防いだ。
「大丈夫?」
「うん」
ホッとした表情を見せた町子は瞬時に眉を吊り上げる。
何か一言言ってやろうと思って口を開いたのだが、それを先んじたものがいた。
「おい、待てよ。おまえら」
いつの間にか二人の後ろに立っていた少年が、美子にぶつかった男子生徒たちを呼び止めていた。
「あ?」
「ぶつかっといて無視すんなよ。この子たちに謝れよ」
美子と町子はびっくりしてその成り行きを見守った。
目の前にいる少年は真新しい学生服を着て、二人に背を向けていた。美子たちと同じ一年生だろう。
対峙した男子生徒たちは眉を吊り上げる。彼らもどうやら一年生のようだ。
「んだよ。ちょっとぶつかっただけだろ」
「だから謝れって言ってるんだろ」
「女の前だからってカッコつけてんじゃねーよ!」
「そんなつもりはねぇよ。おまえらこそ何いきがってんだよ」
美子たちは険悪な雰囲気にびくついていたのだが、目の前の背を向けた少年は平静だった。ただ、静かに男子生徒たちを見ている。
そこへ賑やかな声が割り込む。
「あれ、松山。何やってんの?」
「なんでもねぇよ」
階段から降りてきた数人の男子生徒がきょとんとした顔で松山と呼んだ少年を見た。
そのうちに数名が松山の周囲に集まる。
「おい、松山って、あの松山か?」
「だろ、サッカー部の…」
相手が一人だからと思っていた男子生徒たちは分が悪いと思ったのか、顔を見合わせて「いくぞ」と行ってそそくさと立ち去っていった。
「あ、あいつら!……ったく」
松山という名の少年はかがみこむと美子が落としたカバンを拾い上げた。
「中身出なくてよかったな。ほら」
ちょっと乱暴にも思えるように、ずい、と差し出されたので美子はおずおずと受け取った。
「あ、ありがとう…」
「ああ」
「松山ー!早く行こうぜ!」
「急がなくても部室もグラウンドも逃げねーよ」
松山は笑うと昇降口へと向かっていった。
「ゴールがおれを待ってるぜー!」
「バーカ、待ってなかったらどうすんだよ」
軽口を叩きあいながら姿を消した少年たちを美子と町子は黙って見送った。
「あの人…」
美子は松山が出て行った昇降口をずっと見ていた。
町子はああ、と思い出したような声を出す。
「あの子なんだ。松山くんって」
「町子、知ってるの?」
「けっこう有名人らしいわよ。隣のふらの小学校って昨年の全国小学生サッカー大会に出場したらしいんだけど、初出場で準決勝まで進んだって話題になったのよ。そのときのキャプテンが松山くん。名前は…光だったかな。その大会の優秀選手にも選ばれたんだって。顔もいいっていうんで、女の子にも人気あるらしいわ。うちの小学校の子にもファンになった子がいて、学校まで見にいったことがあるって聞いたわね」
「そうなの。知らなかった」
「美子はこういう話って興味なさそうだものね」
美子は再度昇降口を見やった。
「あの、町子…」
グラウンドではすでに各運動部の練習が始まっていた。
見学している生徒がいるのは、まだ部活を決めかねている新入生だろうか。
サッカーゴールが見えるあたりに目をやると、サッカー部が練習をしていた。
(あ)
パス練習をしている部員たちの中に、先ほどの少年、松山の姿が見えた。
上手にボールを蹴り、逆に飛んできたボールを受けている。
「でも美子、珍しいわね。自分から見に行きたいなんて言って……もしかして、さっきので松山くんに惚れちゃった?」
からかうように言われて、美子は頬を赤らめた。
「え、ホントなの?うわー、一目ぼれってやつじゃないの」
「そ、そうじゃないの。ただ…」
あんな子もいるんだって思ったから。
恥ずかしげもなく、あんな風に思いやりのある言葉を口に出せる男の子もいるんだって思ったから。
「いいんじゃない?松山くんってカッコいいし、優しそうな感じだったもんね。いっそのこと、マネージャーになっちゃう?」
「ええっ?」
「ちょっと待ってて。マネージャー募集してるか聞いてくるから」
「ま、町子っ」
内気で大人しい美子とは正反対に、町子は人懐こくて積極的だ。こういうときに先に行動するのは町子のほうだった。
「え、マネージャーやってくれるの?」
上級生らしき女子生徒をつかまえて聞いてみると、嬉しそうな顔をした。
「ありがとう。今、マネージャーって私一人なのよ。二人も入ってくれるなら大助かりよ。今年は全国狙えそうだから、大変みたいだし、困ってたのよね」
先生に言ってくるから待っててとマネージャーが走っていくと、町子がやったわよ!と美子の手を握る。
「う、うん…でも、町子いいの?」
「いいのよ。せっかく美子がやる気になってるんだもの。私もつきあうわ。それに、全国大会いけそうだっていうならいってみたいじゃないの」
先輩マネージャーが戻ってくると、仮入部申込書に記入させられた。
「五月までは仮入部扱いになるから。それから明日からジャージを用意してきてね。部室は向こうのクラブ棟にあるの。着替えは隣に各部のマネージャー専用の女子更衣室があるからそこで着替えて。今日は…見学していく?」
「あ、はいっ」
そうして美子たちのマネージャー修行が始まった。
「これ空気入れすぎだよ」
「えっ?…ご、ごめんなさい」
マネージャーとしてサッカー部に入部してから、三日が経っていた。
サッカーのことなどろくに知らないので、美子も町子も先輩マネージャーから教えてもらったことをただこなすだけだ。
練習終了後、空気の抜けた柔らかいサッカーボールに空気を入れておくように言われたのだが、たまたま近くを通り過ぎた松山がボールを足で拾い上げて顔をしかめたのだ。
「ただ空気をいれりゃいいってもんじゃないんだよ。ちょっと貸してみろ」
「え、は、はい」
松山が近づいてきて手を差し出したので、美子はドキドキしながら空気入れを渡す。
「これくらいでいいか…うん。ほら、これくらいがいいんだ」
美子は松山から手渡されたボールを持って押さえてみる。
「あ」
「な?空気入れるだけ入れればいいってもんじゃないんだ。他にもあるのか?」
「あ、大丈夫。もうわかったから、あとは私が…」
「いいって、手伝うからさ。おおーい!みんな、そっち終わったらこっちを手伝ってくれ!」
「わかったー!」
グラウンド整備をしていた一年生部員たちに声をかけると早速集まってくる。
「あの…みんな…」
「大丈夫よ。私や美子の仕事だもの。あとは私たちだけで…」
美子も町子も慌てて止めるのだが、松山をはじめとして部員たちは手を止めない。
「なんで?」
「え?」
「みんなでやったほうが早く終わるじゃないか」
「マネージャーたちも早く帰れるだろ?」
部員たちはきょとんとした顔で新人マネージャーたちを見ていた。
美子と町子は顔を見合わせてクスリと笑った。
「ありがとう。みんな」
「じゃあ、さっさと終わらせちゃいましょう」
皆でしゃがみこんでボールを磨いたり、空気を入れたりする。
「皆、仲がいいのね」
松山が声をかけると皆面倒くさがりもせずに自分から進んで手伝うことに驚いた。
町子が聞くと、部員たちは「そりゃなぁ」と言う。
「同じ小学校出身だし」
「それよりも小さいころからずっと一緒にボール蹴ってたしな」
「マネージャーたちだって仲いいじゃないか」
黙々とボールに空気を入れていた松山が顔をあげると、美子はどきりとする。
「私たちも同じ小学校出身だもの。ね、美子」
「うん」
「ああ、やっぱりな。仲がいいからそうだろうとは思ってたけど」
それから間もなく空気入れとボール磨きは終わった。
「終わったー!」
「これで終わりか?」
「うん」
「みんな、手伝ってくれてありがとう」
「いいってことよ」
「な、みんなでやったほうが早く終わっただろ?」
松山が言ったので頷く。
「さてと、片付けたらさっさと帰ろうぜ。腹減ったなぁ」
「ホントホント」
部室に向かう部員たちについていきながら、美子と町子は微笑みを浮かべていた。
六月。
北海道にもようやく爽やかな風が吹き始めた。
練習漬けだったふらの中サッカー部にも道予選を前に久しぶりの休みが訪れる。
その休日、美子はメモ用紙を持って繁華街を歩いていた。
「あ…」
メモに書かれた店名と同じスポーツ店を見つけて中を窺う。
ちょっとだけドキドキしていた。
初めてサッカー部の備品を買いにきたのだ。スポーツ店に入るのは初めてなので、どこを探せばいいのかよくわからないのだ。
町子と一緒ならよかったと思ったのだが、町子は昨晩親戚に不幸があったとかで急に札幌に行くことになったと昨夜電話してきたのだった。
買ってくるものはちゃんとメモに書いてある。わからなければ店員に聞けばいいだけのことだ。
よし、と気合を入れてドアの前に立ったところで声をかけられた。
「あれ、藤沢?」
「え…」
振り返ると松山が立っていた。
「松山くん」
「どうしたんだよ。この店に用事か?」
「え、ええ、あの、部の備品を買ってくるようにって先輩に言われて…」
「ふーん」
休日なので松山は私服を着ていた。生成りの綿のパンツに、白のTシャツ、上には薄いブルーのシャツを羽織っている。足元はスニーカーだ。
初めて見る私服姿に美子は見入ってしまった。
「おれもなんだ。買ってくるものってなんだよ?」
「あ、ここに書いてあるから…」
「んじゃ貸せよ」
松山は美子が持っていたメモをとるとさっさと店の中に入ってしまった。
あっけにとられた美子は慌ててついていった。
「松山くん」
店内に入ると松山を探して視線をめぐらせる。
「藤沢、こっち」
松山はひょこっと顔を出して手招きする。
「テーピングとか売ってるのはここな」
「あ、はい」
指示されたとおりのものを次々と買い物かごに入れていく。さすがに慣れているのか松山はあちこち移動しながら美子にいろいろと教えていった。
預かった部費で支払いを終えると、美子は松山のところへ戻る。そのまま帰るわけにはいかないからだ。
「松山くん」
「あ、終わったのか?」
「うん」
松山は手にサッカーのスパイクを持っていた。
「新しいのを買うの?」
ここに用があると言っていたのだから、自分も買い物するつもりだったのだろう。
「ああ。一足ほど履きつぶしちまったし、ちょっと大きめのを買っておこうと思って」
足に合うのを履いてないと足にボールが当たる感覚が違うのだという。
気にいるのがなかったのか、店員に声をかける。
「すいません。このタイプの25センチってありませんか?」
「25!?」
傍で聞いていた美子は思わず声をあげ、店員と松山に視線を向けられてから顔を赤らめた。
「ご、ごめんなさい」
「なんだよ。そんなにおかしいか?」
店員が倉庫を見てくると奥へ入ってしまってから松山は苦笑した。
「あ、えっと…足、すごく大きいんだなと思ったから…」
「そうか?別に普通だろ」
松山はそう言うが、彼の背丈は美子よりは高いと言ってもそれほど高いわけではない。美子の父親だって靴を選ぶときに26センチか25.5センチかと悩むような大きさだ。その父親よりも十数センチは低いと思われる松山の足の大きさがそう変わらないのが不思議に思えたのだ。
「そういう藤沢は何センチ?」
「えっ…わ、私は…22.5センチ…」
「ふーん。小さくって、なんか女の子って感じだな」
「えっ」
「あ、悪い。女の子なんだよな」
ハハハと笑う松山にドキドキしてしまう。
なんだか変な感じだ。松山の言葉や仕草だけでなぜこんなにもドキドキしてしまうのだろう。
そのうちに店員が箱を持って戻ってくる。
「これでいいかな?…一応履いてみる?」
「はい」
幅はこれでいいかとかつま先は痛くないかとか細々と話す。
「成長期だからね。少しくらい大きいほうがいいかもしれないな」
「実は親にも怒られたんですよ。すぐに足が大きくなって履けなくなるって」
「そりゃ仕方ないよなぁ」
松山はそのスパイクを購入して二人は店を出る。
「もう用事は終わりか?」
「あ、うん…」
「んじゃ、帰るか」
「は、はい」
成り行きで二人並んで道を歩く。
だが、美子は成り行きとはいえ、松山と一緒に歩けるのが嬉しかった。
「あの、松山くん」
「ん?」
「今日はどうもありがとう。私一人だったらもっと時間かかってたかもしれないから」
「いいって。そういえば、町田はどうしたんだ?」
「あ、町子は…」
今日町子が来れなくなった理由を話すと「そっか。それじゃあ仕方ないよな」と松山は言った。
「でも、これから道予選に向けて練習も厳しくなるだろうし、部の備品とか切らせないよな」
「また当分お休みもないものね」
「ああ。でも、これも全国大会にいくためだからな。練習あるのみさ」
「松山くん、いつも朝練一番しているくらいだもの。早起きも大変でしょう?」
「まあな。でも、おれにはサッカーの才能なんてないから練習するしかないだろ」
松山の言葉に驚いた美子はえっと声をあげる。
「松山くんはすごく巧いと思うわ。どうしてそんなこというの?」
同じサッカー部員の中でもかなり巧いほうだと思う。上級生と混じってプレイしたって負けたりはしないだろう。
素人の美子にだって巧いかそうでないかくらいはわかる。
松山本人から聞いた話ではないが、昨年の全国小学生サッカー大会では大会No.1のボールキープ力という評価も得ていたらしい。大会No.1ということは日本一といってもいいくらいなのに。
「おれはヘタだよ。すごく」
淡々とした松山に謙遜した様子は見えない。心底そう思っているのだろう。
「去年の全国大会のときさ…」
松山はポツポツと話しだした。
「すごく巧いやつがいたんだ。それもたくさん。その中でも優勝したチームのキャプテンは天才っていってもよかった。人がやっていたことをすぐに身につけて同じプレイをしてみせるんだ。ああいうのを才能のあるやつっていうんだろうな。でも、おれにはそれができなかった…。やってみたけど、ダメだったんだ」
「松山くん…」
「そんな顔すんなよ。悔しいのはおれのほうだって」
よほど暗い顔をしていたのだろう。松山のほうが気づかうように笑った。
「悔しいけど…負けたとは思ってないぜ」
「え?」
「そりゃあ、おれには見ただけで同じことなんてできないかもしれない。でも、絶対にできないなんてことはないだろ。練習すれば…嫌というほど体に覚えさせればいいだけだ」
美子はぎゅっと胸を締め付けられるような感じがした。
松山は人の才能を認めながらも全然卑屈になっていない。自分に才能がないからと後ろ向きになることもない。常に前を向いている。
「ま、それもサッカーが好きだからできるんだけどな」
「うん…」
好きで好きでたまらないのだろう。練習中の松山は楽しそうにボールを蹴っている。
「おれなんか、サッカーがなかったらなんの取り得もないからな」
「そんなこと…」
「ん?」
「あ、ううん…」
そんなことない。
たとえ松山の言うとおりサッカーの才能がないといっても、努力しつづけることは難しい。だから、その努力しつづけることも一つの才能だと思うのだ。
街中から住宅街に入ると松山が立ち止まる。
「おれ、こっちなんだ。藤沢は?」
「あ、私はここをまっすぐだから…」
「そっか。まだ昼間だから大丈夫だよな」
「え?ええ」
夜暗かったりしたら送ってくれるつもりだったのだろうか。
でも、まだ日はずいぶんと高い位置にある。
別につきあっているような仲ではないし、そこまで図々しいお願いなんて恥ずかしくてできない。
「それじゃ、また明日な」
「うん、また明日」
ひらひらと手を振って走っていく松山を見送って家への道を歩き出す。
自然に頬が緩んで笑みが浮かんでくる。
松山のいろんな面が見れて嬉しいのだ。
胸が痛くて苦しくて切ない。
だけど、この想いをとめることはできない。
たぶん、もう走り出してしまったのだ。初めて彼を見たときから。
―一目ぼれってやつ?
町子がそう言っていた。
あのときは違うなんて言っていたけど、たぶん町子の言うとおりなのだ。
でも、いまはまだ自分の気持ちに自信を持つことができない。
もう少しこの気持ちを育ててみよう。
いつか、綺麗な花が咲くかもしれないから―――
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