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管理人の日々徒然&ジャンルごった煮二次創作SSアリ
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ホント、話題がないわ~(笑)
というか、平々凡々な一日を毎日過ごしております。

いや、本当は胸くそ悪くなるほど不愉快な出来事が会社であったのですが、なんかもうええわという気分になったので愚痴は言うまい。
どうせもうすぐ辞めるつもりだし。

気を取り直して、ツバサナです。
これも10年前に書いたものなのですが、文章は少し修正してます。
話の大筋は変えてませんので。


ROAD TO 2002の後かな。エルクラシコ試合終了後の話ってことで。

タイトルがついてたり、ついてなかったりするのは、タイトルを思いついて書き込んでただけで、タイトルがないのはサイトに掲載するときに咄嗟に考えてたからじゃないかと(汗)

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【君がいるだけで】
 
 
 
「おかえりなさい、翼くん。今日はお疲れさまでした」
「うん」
 
 
 エル・クラシコ――伝統の一戦、R・マドリッドとの戦いを勝利で終え、翼は疲労に満ちた体を叱咤して自宅に帰った。
 玄関に入ると柔らかな笑みを浮かべた妻が出迎えてくれ、翼はようやく終わったんだと自覚した。
「みんなが来てくれてたんだけど今日はきっと疲れてるだろうから、また明日来ますって。ロベルトさんも今日はゆっくり休むようにって言ってたわ」
「そうか…」
 早々に寝室に入ると体を横たえる。
 
 だが、どうしたことだろう。
 疲れているのに一向に眠気がこない。
 サイドテーブルの明かりだけが灯るその部屋の天井をじっと見つめた。
 
「翼くん?」
 風呂から出てきた早苗はパジャマ姿で寝室に入ってくる。
「どうしたの?眠れないの?」
 翼の様子をみて、ベッドにあがってのぞきこむ。
「翼くん?」
「気が昂ぶってるのかな。眠れないんだ」
 翼は起き上がって胡座をかいた。
「いや、眠ると夢だったんじゃないかって思うからかな」
「翼くん…」
 早苗は膝で立つと、そっと翼の頭を引き寄せて胸に抱きしめた。
「早苗ちゃん?」
「大丈夫。夢じゃないわ。翼くん、がんばってたもの。素敵だったわ」
「……かなり、カッコ悪かったと思うよ」
 試合に出ると決まってからは、プレッシャーで体調不良になったり、ナトゥレーザとの一騎打ちに負けるわ、途中交代されそうになるわで。
 クスリと笑って、ほっそりとした体に腕を回して抱きしめ返すと早苗は明るい声で言った。
「ううん。私のダンナ様は世界一カッコいいの」
「ありがとう」
「私のほうこそ、ごめんなさい」
「ん?」
 何を謝るのかと翼は早苗を見返す。
「翼くんが苦しんでるのがわかってるのに、何もできなくて…。翼くんが元気になったのは、ロベルトさんや、ラドゥンガさんの励ましのおかげね」
「そ…」
 そんなことないと言おうとすると、早苗は言葉を続ける。
「私には何も言えなかったの。私が言えばただの気休めでしょう?きっと翼くんはそんな言葉をほしかったんじゃないと思うの。だから、私にできることは一つだけ」
 いつもどおりに翼を送り出して、帰ってきたらいつもと変わらない笑顔で出迎えて、栄養を考えた食事を作るだけ。
 翼がいつもと変わらない生活をおくれるようにする。それが奥さんの仕事だから。
「うん…ありがとう。だからがんばれたんだ。そりゃあ、ロベルトやラドゥンガさんが励ましてくれたからおれはサッカーを楽しめばいいんだってことを思い出して試合に出ることができた。だけど、君がいなかったら、きっともっと早く逃げ出してたと思うよ」
 一人だったらきっとプレッシャーに押しつぶされて悩みまくってもっと体調が悪くなっていたかもしれない。それを免れることができたのは、きっと早苗のおかげだ。
 自分が苦しんでいてもそれに一緒に流されることはなく、それどころか必死につなぎとめていてくれたのではないか。
 なんて強いんだろうか。
 ときどき、目に見えるように早苗の強さを感じる翼は、連れてきてよかったと、ついてきてもらってよかったと思う。
「君がいてれくてよかった…」
 翼は早苗の頬に手を当てると軽く唇を押し当てて微笑んだ。
「よかった」
「え?」
「翼くん、ちゃんと笑ってるもの」
 早苗は今度こそ、本当に安心したように笑った。
「ここのところ、笑ってるようで笑ってなかったもの」
「早苗ちゃんも」
「私?」
「うん、いや、いまの笑顔が一番早苗ちゃんらしいよ。よかった。またその笑顔が見れて」
「翼くん…」
 早苗は翼のように無理して笑っていることはなかった。だけど、心から安心して気が緩んだからこそ、本来の笑顔になったのだろう。
「ご心配おかけしました」
「いいえ。心配ならずーっと昔からしてますからね。あのときに比べたらまだまだ」
「あのとき?」
 翼は首を傾げて、ああ、と思い出す。
 
―翼くん、サッカーができなくなっちゃう
 
 中学三年の夏、全国大会の決勝戦が終わったあと、早苗の親友から聞いたのだ。
 あの決勝戦で、早苗はずっと泣き続けていたという。
 試合に出してあげてくれと言いながらも、翼が倒れるたびに泣いていたと。
 それだけ自分の気持ちを尊重してくれていたのだ。
 それを聞いてなんて強さなんだろうかと、早苗に対する気持ちが自分でも思っていなかったほどに大きくなっていったのだった。
 
「あのときみたいな心配だけはしなかったもの。それに、こんな心配するのは私だけの特権ね」
「特権?」
「そう。翼くんの奥さんだけの特権」
「そんな特権はちょっと困るなぁ」
 心配させたいわけじゃないのだから。
 翼は抱きしめられた状態で、早苗のわき腹に手をあてた。
「翼くん?………きゃっ………きゃははははっ…やだっ!…翼くんってば!いやっ、くすぐったい!」
 わき腹をくすぐられて、早苗はたまらず夫の腕から逃げ出した。それでも翼の手は止まらない。
「きゃはははっ……つっ、翼くんたら!もうやめてってばぁ」
「アハハハ」
 ベッドの上でじゃれあう。丈夫な造りのマンションでなかったら、いまごろ階下に迷惑をかけまくっていることだろう。
 ひとしきりじゃれあった後、翼が早苗を抱え込んだままベッドに倒れこむ。
「あー、笑った笑った」
「うん、笑ったね」
 コツン、と額をあわせて笑いあう。
 翼は半身を起こして体重をかけないように、早苗に覆い被さってキスをする。
「翼くん」
「君が、いるだけで……おれは…」
 耳もとで囁くような声が寝息にかわると同時に翼の体重が胸元にかかってくる。
 スースーと気持ちよさそうな寝息に早苗はホッとする。
 でも、と思う。
「この体勢はキツイわね…」
 この夏の自主トレの成果で翼の体つきは一回り大きくなっている。そのぶん体重も増えているので、早苗との体重差は二十キロ以上だ。がっしりとした体つきはすでに少年のものではなくて早苗はドキドキしてしまうのだが、この体勢は困る。
 翼の体をちゃんと横たえさせて、しっかりと上掛けをかけて寝顔を覗き込んだ。
 その寝顔は昔とかわらないあどけなさを残している。
 もしかするとこのままずっとこんな寝顔なのかもしれない。永遠のサッカー小僧は。
 早苗は少し肉の落ちた頬にそっと口づける。
「今日は勝利おめでとう。それから、おつかれさま。また明日からがんばって」
 
 でも、今はゆっくりと休んでね。
 
 
 
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