管理人の日々徒然&ジャンルごった煮二次創作SSアリ
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読み返すと、10年前の作品だなぁとつくづく思う(苦笑)
なんか、文章表現がおかしいところとかあったりして。
といっても、よほど変でないかぎりは修正してませんけど。
今回は結婚後のバルサBでの初試合前の話。
なんか、文章表現がおかしいところとかあったりして。
といっても、よほど変でないかぎりは修正してませんけど。
今回は結婚後のバルサBでの初試合前の話。
【ここだけの話~夫婦喧嘩?編~】
「遅いなぁ」
早苗はリビングの時計を見上げた。
今日の練習はとっくに終わっているはずだ。
それなのに、早苗の旦那様はまだ帰ってこない。
窓の外はすでに日が落ちていて、暗くなってしまっている。
「大丈夫だとは思うけど」
ほとんどの外国の街の例にもれず、バルセロナの街は治安がよくない。
観光地ということもあって、早苗たちのように地元民たちの目から見ればどう見ても外国人としか思えないような日本人はとくにスリやひったくりに狙われやすいので、十分気をつけるようにと言われている。
翼にしてもリーガデビュー前のバルセロナでは当然顔も知られていない。
それもあってか練習のある日はクラブハウスまではサイモンが送り迎えしてくれている。
きっと練習しているんだわ。
寄り道だとかするような翼ではない。
翼が連絡もなしに遅くなる理由なんて一つしかない。
翼のこういう行動パターンを早苗は何度も経験しているので、簡単に予想できてしまう。
わかりやすくて助かるとは思うのだけど、それはそれで心配になるのだ。
無理をしなければいいのだけれど。
早苗はベランダに出るとカンプノウのあるあたりを背伸びして見た。
カンプノウは決して遠くはないのだけれど、さすがにどこにあるのかまでははっきりわからない。
その近くにある練習場なんて見えるわけがないのだ。
「お料理冷めちゃうよ。翼くん」
早苗はダイニングにとってかえすとラップを取り出した。
「お疲れ、ツバサ。また明日」
「うん、また明日。お疲れさま」
練習に付き合ってくれたセラーノに手を振って、翼はロッカールームに戻って軽くシャワーを浴びる。
ふと時計を見たらずいぶんと遅くなっていたことに気づいた。
「しまった!」
翼は慌ててクラブハウスを出た。
「早苗ちゃん、怒ってるかな」
バルセロナにきてからこれまでは練習でもあまり遅くなることはなかった。必ず日が暮れる前には帰っていたからだ。
だが今日は連絡も入れずに遅くなってしまった。
翼は日本のテレビドラマやアニメでよく見るような光景をぼんやりと思い浮かべた。
玄関に仁王立ちになっている早苗を想像して首をすくめる。
「恐いなぁ」
「え、何かいいましたか?翼さん」
運転していたサイモンが翼の独り言を聞きつけて尋ねる。
「いや、なんでもない。独り言だよ」
送ってくれたサイモンに礼を言って自宅のある窓を見上げた。
明かりはついているので早苗はいるようだ。
あんまり怒ってないといいなぁなどと思いつつ、ロビーのドアを開けた。
「ただいまー」
できるだけいつもどおりにと玄関のドアを開けると奥からパタパタとスリッパの足音が聞こえた。
「おかえりなさい」
いつもと変わらない早苗の出迎えにホッと一息つく。
「晩御飯できてるわよ」
翼からバッグを受け取った早苗は家事室のドアを開けた。
そこで翼は妙な違和感に気づく。
遅かったのね、と問い詰められないのは何故だ。
「早苗ちゃん」
「何?」
翼のバッグから練習着などの洗濯しなければならないものを取り出して洗濯機に入れる。それはいつもの光景だ。
「遅くなってゴメン」
怒られる前に謝ってしまえと翼は先手を打ったのだが、早苗の答えはあっさりしたものだった。
「ううん。いいのよ」
「怒って、ないの?」
思わず聞いてみると早苗はクルリと翼に向き直った。
軽くなったバッグを抱えて、上目遣いにじっと見つめる。
「怒ってほしいの?」
「え?そういうわけじゃないけど…」
「翼くんは私が怒るようなことしたって自覚があるわけね」
「うん、まあ…」
早苗はクローゼットにバッグを戻すとダイニングに移動する。
翼は情けなくも後を追いかけるしかない。
「怒れるわけないじゃない」
早苗はダイニングテーブルのそばまでくると立ち止まった。
「え?」
「翼くんががんばって練習しているのに、それを遅くなったって私が怒る理由なんてないじゃない」
それが翼の立派な仕事であり、二人の生活を支えるために必要なことなのだから、怒る理由なんてないのだ。
「でも」
「え?」
「私がもし怒るとしたら、遅くなったことに怒るんじゃなくて、遅くなるからって連絡くれなかったことに対してかしら」
「それは、本当にゴメン…」
「いいのよ。どうせ練習に夢中になって忘れてたんでしょう?」
すっかりお見通しというような早苗の言葉に、そのとおりですと頷いてしまう。
これだから彼女に頭が上がらないのだ。
「翼くんは一生懸命がんばってるんだもの。それは私も嬉しいことだから気にしないで。でも…私がここで待ってるってことは忘れないでね」
翼は早苗を抱き寄せた。
なんとも言えなくて、いい匂いのする髪に頬擦りする。
「私だって怒りたくないのよ。喧嘩だってしたくないの」
「おれだってそうだよ」
「だったら約束してね。遅くなるときは必ず連絡すること。いい?」
「わかったよ」
「忘れたらおしおきね」
「お、おしおき?」
「そうよ。罰として、食事の後片付けはぜ~んぶ翼くんにやってもらうから」
「え~っ!?」
翼は本気で嫌そうな声をあげた。
家事の中でも炊事に関することが一番苦手なのだ。できないわけではないが、食事の後片付けなんてやりたくない!というのが本音だ。食器洗い乾燥機などという便利なものがあるのだが、後片付けというのは食器だけ洗えばいいわけではないのだ。
「翼くんが嫌なことじゃないと、罰ゲームにならないじゃないの。嫌なら忘れないでね」
「わかりました」
翼自身、それくらいでないと忘れそうな自覚はあったので、仕方なくも頷く。
「うふふ、楽しみよね」
リビングのソファに座ってテレビを見ていると、後片付けを終えて隣に座った早苗は楽しそうに言った。
「何?そんなに後片付けしたくないの?」
だったら、ちゃんと交代制にでもすれば翼だって片付けくらいはやるのだが。
翼はムスッとした顔で早苗に言った。
「ううん、翼くんが約束をちゃんと守れるかどうかってことが気になるの」
自分が仕事を持っているのならともかく、専業主婦の早苗は家事はすべて自分の仕事だと思っているので、本当は翼に後片付けなんてやってもらわなくてもいいとは思っている。
「それって、おれが最初から約束守れないって思ってるからだろ?」
「え?そんなことはないけど?」
そらっとぼけた顔をする妻の両頬を翼はこのっとつまむ。もちろん軽くだ。
「いひゃーい!」
「よし、みてろよ。おれ、絶対に約束守るからね」
こんなところで生来の負けず嫌いを発揮するものどうだかと思うのだが、いくら愛する妻とはいえ、そこまで言われたらムキにもなるというものだ。
早苗は解放された両頬をさすって眉を八の字にした。
「もう…私は…翼くんにできたての温かいご飯を食べてもらいたいだけなのに…」
なんでこうなっちゃんたんだろう?
自分の撒いた種だとは思いつつも、なんだか変な方向に話がいっちゃったなぁと早苗は反省したのだった。
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