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管理人の日々徒然&ジャンルごった煮二次創作SSアリ
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前にも書きましたけど、岬×あづみでもSSを書いてます。
数多くはないですけどね。
実は意外と好き。
なんですが!
原作ではあづみちゃんの出番がなくなって寂しい。
あんまり好かれてないんでしょうかね。このカップリング。
私は好きなんだが!

私が書くと、岬くんが腹黒というか、ちょっと意地悪っぽくなっちゃうんですけど。
ごめんよ、岬くん。ツバサナとかに出る岬くんはいい子なんですけどね。
好きな子を前にするとちょっぴり意地悪になる感じ。
もちろん、根は好青年ということで。

これも10年前に書いたものです。



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 今日こそ、言わなくちゃ。
 
 
『え、明日?いつもは日曜日なのに珍しいね』
「明日は丸一日休講になっちゃったのよ。ただでさえ午前中しか講義がないっていうのに…。そういうことで、明日伺いますから」
『じゃあ、明日は迎えに行くよ。何時に着くの?』
「い、いいわよ!ダメじゃない。無理しちゃ!」
『もう日常生活する分には問題ないよ。それに、ちょっと出かけるくらいなら許可もらわなくても大丈夫。リハビリのためにいるようなもんだからね。それとも、ボクが行っちゃダメなのかな?』
 あづみはまったくもう、と唇を尖らせる。
 こういう言い方をするから断れないのだ。
「わかりました。お願いします」
『かしこまりました』
 
 
 昨夜、電話でそんな会話をした人物が目の前でにこにこと手を振っている。
 
「おはよう。あづみちゃん」
「おはよう」
 そうして立っているのを見ると、昨年大怪我をしたようには見えない。綿のパンツに包まれた足はすでに包帯もとれて、傷跡も綺麗に治っているとはいうが、なんとなく素足を見ることができないでいる。
「ボク、ここまで出てきて気がついたんだけど、あづみちゃん、研究所に何か用事でもあった?」
「え?ううん」
 あづみが静岡までやってくるのは、まさに岬を見舞うため。岬に会うためであって、研究所に用事はない。岬がここにいるのならば、わざわざ研究所まで行くことはないのだ。
「あのね、とりあえずお茶…コーヒーでも飲まない?電車の中で眠っちゃってて、眠気覚ましに飲みたいから」
「うん、いいよ」
 駅前のコーヒーショップ入るとあづみはカフェオレ、岬はコーヒーを注文する。
 椅子に腰を落ち着けると、岬が口を開いた。
「で?」
「で…って?」
「あづみちゃんのその様子からすると、単に時間が空いたからお見舞いにきたとかいうんじゃなくて、ボクに話でもあるんじゃないかなと思ったんだけど、違う?」
「そのとおりです…」
 のんびりとした表情で岬はコーヒーを飲む。だが、あづみにはカフェオレを飲む余裕もなかった。
「あのね、私…またフランスに引っ越すことになったの」
「えっ!」
 岬は目を丸くする。
 本当に驚いていたのかどうかはわからないが、数秒たってからようやく口を開いた。
「また、お父さんの仕事の都合とか?」
「ううん、今度は私一人。私がパリの大学に留学するの」
「りゅう、がく?」
「うん…正式には九月から向こうの学校に通うんだけど、八月にはパリに引っ越さないといけなくて、準備とかもあるから…たぶん、こっちにはあまり来れないと思うの。一応、岬くんには報告しておこうと思って…」
 あづみはカフェオレのカップから視線をあげた。岬がどんな表情をしているか気になったからだ。
 そして岬は……
 微笑んでいた。
 
 ツキリとあづみの胸が痛む。
 寂しそうとか、残念そうな表情でもしてくれたら、少しは気にかけていてくれるのかと思っていたのに。
 だが、そう思っていたあづみは岬の意外な言葉に驚く。
「おめでとう、あづみちゃん。すごいね」
「……え?」
 行ってらっしゃいとか、がんばれ、とか言われるのかと思ったら違っていた。
「外国に留学するのって結構勇気がいると思うよ。たとえあづみちゃんがフランス…パリに住んでいたことがあるから慣れているとしたって、今度は一人暮らしするんだよね?それでも決断したってことは、それだけあづみちゃんにやりたいことがあったってことだ。そういう夢…みたいなものがあるってやっぱりすごいことだと思うよ」
 だから、おめでとう、と岬は言った。
 がんばれと直接言ってもらっているわけではない。だけど、すごく励まされた気がするし、なんだか自分を認めてもらえたようで嬉しかった。
「あり…がと…。がんばるね、私」
 本当は留学のことを告げるとともに、もう一つ告げたい言葉があった。
 だけど、いい。今はいい。
 だって今が最後なわけじゃない。
 なんだか心が温かくなってくる。
 ホッとしたあづみはカフェオレにようやく口をつけた。
 
「それにしても、フランスかぁ…。先越されちゃったなぁ」
「え?あ、そうね」
 あとから聞いた話だが、アジアユースが終了した時点で岬にはフランスのとあるチームが岬獲得のオファーを出そうとしていたらしい。だが、岬の事故のせいでその話は流れてしまった。岬はもともとフランスのクラブチームに入ることを希望していたという。それはもちろん、先に海外で活躍する彼の親友の影響もあるようだ。
「でも、ボクもすぐに追いかけるよ」
「え?ええ…」
 先日、大空翼がスペインリーグの名門クラブ、バルセロナに移籍が決まったというニュースを知った。岬にはいい刺激になっているのだろう。
 あづみがそんなことを考えていると、岬は話を続ける。
「翼くんはブラジルで三年…いや、四年近く彼女を待たせたみたいだけど、それほどはかからないようにがんばるからね」
「うん……………」
 あづみはコクリと頷いたが、数秒たってから「え?」とカフェオレのカップから視線をあげた。
 正面に座る岬は頬杖をついた体勢でにっこりと笑う。
 天使のような、とはサッカー雑誌などで彼の笑顔を表現するときによく使われる言葉だが、あづみはその天使のような笑顔に心臓を撃ちぬかれたような気がした。
「あ、あの、岬、くん?」
 なんだか恥ずかしくなって目を合わせていられなくなり、あづみは視線を下げた。
 頬杖をついていないほうの岬の指がコーヒーカップの受け皿の縁をなぞるのをなんとなく見やった。
 わー、爪の形綺麗で羨ましい、とか全然関係ないことを思っていたら、名前を呼ばれる。
「あづみちゃん」
「は、はいっ」
「待っててくれるよね?」
「待ってても、いいの?」
 あづみは自分の体がふわふわした柔らかいものになったような気がした。体をちゃんと支えていられない。
「どうしてそんな言い方するのかな?聞いてるのはボクなのに」
 岬は拗ねたような声を出すと、スッと手を伸ばしてきた。あづみはビクッと肩を震わせる。
 だが、岬の手はそのままあづみが飲んでいたカップを持ち上げてトレイに載せた。
「出ようか」
「あっ」
 あづみは岬のあとを追いかけた。
 
 どうしよう。
 怒ったのかな?
 
 試合や、サッカーに関わること以外では温厚で穏やかな表情の岬しか見たことがなかったので、先ほどのようなちょっと機嫌を損ねたような顔は初めてだった。
 駅前からしばらく行くと、小学校のグラウンドが見えた。フェンス越しにサッカーをしている少年たちの姿が見える。
 黙ってあとをついてきたあづみは立ち止まった岬におずおずと近寄った。
 
 ああもう、私らしくない。
 どうして強気でいられないんだろう?
 ううん、いつもと変わらないつもりなのに。
 岬くんのせいよ。
 
 以前はそうでもなかったのに、岬と会うたびに自分がおかしくなる。
 岬に会えるだけで嬉しくなる自分。
 岬の一言一言に一喜一憂している自分。
 それが嫌なわけではない。
 だけど、『嫌われたくない』という気持ちが勝って、何も言えず、何もできなくなる。
 今だってそうだ。
 
 岬を怒らせたかったわけじゃない。
 あのときの答えだって決まっている。
 でも、自信がなくて、つい問い返してしまった。
 もっと、確実な言葉が欲しかっただけで。
 
「あづみちゃん」
「はい」
「さっきはゴメン」
「ううん」
 岬はあづみに向き直った。
「即答してくれなかったのがちょっとショックで…でも、いきなりだったからビックリしたよね。ホントにゴメン」
「ううん、いいの!私こそ、信じられなくて…岬くんがあんなこと言うなんてホントに驚いたから」
 いつも優しくて紳士的で、あづみに対しても親しい友人とは思ってくれているだろうけど、それ以上には見られてないと思っていた。
 しかし、あのセリフはどう考えてみても、友人に対するセリフではない。
 そう思ったら、思わず問い返していたのだ。
「それじゃ改めて…あづみちゃん、フランスで待っててくれる?あづみちゃんに待ってて欲しいんだ」
「……うん………待ってる………待ってるから、早く追いかけてきてね」
 あづみは何度も頷いた。泣きそうになったので拳を唇に当てる。
「がんばるよ」
 岬は微笑みながらあづみの手をとった。
 
 
 
 帰りの電車が出るまではまだ時間があるので、街中をブラブラと歩く。
 もちろん手はつないだままだ。
「岬くん」
「何?」
「さっきは気づかなかったんだけど、私は向こうの大学に編入だから卒業するまでは三年もいるかどうかわからないわよ?それに、卒業したら戻ってくるかもしれないんだけど…」
「あ、そうだね」
 朗らかに笑う岬に、あづみは「全然考えなかったの?」と眉をつりあげる。
「だったら、それまでにフランスに行くまでだよ。うん、いいんじゃない?リミットつきでも。やる気でてきたよ」
「もう~、そうじゃなくて、もしも岬くんがフランスにきて、私が日本に帰ることになったらどうするのよ!」
「大丈夫。ボクがフランスに行ったときには、日本に帰らなきゃいいだけのことだよ」
「それはそうなんだけど…」
 わかってない。
 大学を卒業したって、向こうで職が見つかればいいが、それができなかったらどうやって生活していけばいいのだ?親に仕送りしてもらうわけにはいかないというのに。
 それを回避できる方法があるにはあるのだが…
 まさか、ねぇ…
 あるわけないないとあづみは頭の中で否定した。
 
 
 とりあえず、今は目の前の出来事だけで精一杯だ。
「というわけで、遠距離恋愛開始だね。あ、そうなるのはもう少し先になるのかな」
「え…ええ~っ!?」
 そうだった!
 改めて言われるとものすごく恥ずかしい。
 真っ赤になったあづみを見て、岬は嬉しそうににこにこと笑うのだった。
 
 
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