管理人の日々徒然&ジャンルごった煮二次創作SSアリ
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拍手&コメントありがとうございます。
反応あるとやる気出てきますねぇ。
今回も10年前に書いて、途中で放棄してたものを最後まで書き上げてみました。
当初考えていた結末とは違うと思うけど。
なんか、途中で書きかけみたいなものがたくさんあるので、「これって、最後まで書くつもりだったんだろうか?」と思うものが多すぎる(汗)
中二のころと現在(?)を、いったりきたりしてます。
一応行間はとってあるので、わかるとは思うのですが。
付き合う前というか、お互いに意識しあってる関係とか好きかな~。
そういえば、拍手数が多いのが、以前から掲載している最初の3作品なのは当然なのですが、続いて「その6」、「その9」、「その10」が同数となってます。
何を基準として好まれているのかよくわからんのですよ(笑)
反応あるとやる気出てきますねぇ。
今回も10年前に書いて、途中で放棄してたものを最後まで書き上げてみました。
当初考えていた結末とは違うと思うけど。
なんか、途中で書きかけみたいなものがたくさんあるので、「これって、最後まで書くつもりだったんだろうか?」と思うものが多すぎる(汗)
中二のころと現在(?)を、いったりきたりしてます。
一応行間はとってあるので、わかるとは思うのですが。
付き合う前というか、お互いに意識しあってる関係とか好きかな~。
そういえば、拍手数が多いのが、以前から掲載している最初の3作品なのは当然なのですが、続いて「その6」、「その9」、「その10」が同数となってます。
何を基準として好まれているのかよくわからんのですよ(笑)
「それじゃ翼さん。お疲れさまでした。明日はゆっくり休んでくださいね」
「うん、ありがとう。それじゃ」
いつもクラブハウスと家の間を送り迎えしてくれるサイモンに手を振って、翼はマンションの自宅の窓を見上げた。
温暖な気候のバルセロナでも朝晩が冷え込むようになってきた。
風邪ひかないように気をつけないと。
自分だけでなく、あの部屋で待つ人の様子にも注意しなくてはいけない。
いまはとても大事な時期だ。体調には気を付けてもらわなければ。
「ただいまー」
ドアを開けて玄関に入ると、いつもの「おかえりなさい」という言葉が聞こえない。
部屋の中も明かりがついておらず薄暗い。
出かけているのだろうか。
「早苗ちゃん?」
リビングに入るとダイニングテーブルに突っ伏して眠っている妻の姿があった。
キッチンを見やると、夕飯の下ごしらえがしてある。
きっと翼が帰ってくる時間を見計らって調理を始めるところだったのだろう。
今日は翼が帰宅するほうが早かったのだ。
時計を見ると、まだ夕飯までには時間がある。起こすのもしのびないので、とりあえずリビングのソファに寝かせたほうがいい。
翼は早苗の体に手をかけるとヒョイと抱き上げた。
「やっぱり軽いなぁ」
夏に自主トレした成果もあるが、早苗のほっそりした体はとても軽く感じる。
こんなに細くて小さな体にもう一つの命が宿っているなんて信じられない。
まだその気配すら感じ取れないお腹に目をやる。
「そういえば、あのときも軽いって思ったんだっけ……」
―――その年の夏は残暑が厳しかった。
南葛中学が、全国中学生サッカー大会を二連覇した夏休みのことだった。
全国大会が終了してから三日後にはサッカー部の練習は再開された。
三年生はこの全国大会で引退だ。
部活はすでに二年生を主体として始められていた。
新キャプテンは大空翼。
満場一致というか「キャプテンは翼だろ」と当たり前のように決まっていたのだった。
ふう、と大きく息をついてタオルをベンチに置く。
けだるい体を叱咤してグラウンドに目をやった。
気分が悪い。
早苗は大きく深呼吸する。
どうしても下腹部の痛みがおさまらない。二日目は辛い。
いつもならここまでひどくならないのだが、忙しさのせいで体調が悪くなっているのかもしれない。
全国大会にひっかからなくてよかったとは思ったのだが、暑さのせいではない、嫌な汗が背中をつたう。
今朝はこんなことはなかったのに。
痛み止めの薬をもらって飲んだほうがいいだろうか。
グラグラしてくる意識をなんとか保ちつつ、スポーツドリンクを持ってこなくてはと部室へ足を向けたところでゆかりにとめられる。
「早苗、大丈夫?あなた、顔真っ青よ」
「ごめん…今日、二日目で…朝は大丈夫だったんだけど…」
さすがに女の子同士だけあってこれだけで意味は通じる。ゆかりは気遣わしげな顔をして近寄ると小さな声でいった。
「保健室に行ってきなさいよ。ここは私だけで大丈夫だから」
「でも…」
これから休憩時間で皆にタオルやスポーツドリンクを出さなくてはならないのに。
「バカね。あんたがそんな顔してるほうが問題よ。そういうのは一年生にでも手伝ってもらうから。行ってきなさい。先生には言っておくから」
「うん…」
「先生!」
ゆかりは顧問の古尾谷の元にいって早苗の状態を説明する。すると、さすがに大人であり教師でもある古尾谷は、早苗の顔色をみて気遣うように言った。
「中沢、辛いようなら保健室で休んでいろ。体調がよくなったら戻って来い」
「はい。先生…」
「早苗、ついていこうか?」
「いいわ。大丈夫。もうすぐ休憩なんだし、皆をお願い」
「…わかったわ」
ゆかりは早苗のかわりに用意したスポーツドリンクを取りにいく。それを見やってから校舎に向かって歩き出した。
気持ち悪い。
早く行かなきゃ…
「よし、それじゃ十分休憩!」
「はいっ!」
サッカー部員たちが集まってくる。
「一年生、ちょっと手伝ってちょうだい」
ゆかりは一年生部員を手伝わせてタオルとスポーツドリンクを配っていく。
「おい、あねごはどうしたんだよ?」
石崎が不思議そうに訊ねた。
「あ、あそこにいるじゃん」
見ればゆっくりと校舎に向かって歩いていくのが見える。
「どうかしたのか?」
「ああ、ちょっとね。……貧血みたいだから保健室で休むように言ったのよ」
ゆかりがそっけなくいうので、大丈夫なのか?と部員たちは顔を見合わせた。
気恥ずかしさもあり、それ以上触れられたくなくて、ゆかりは短く言う。
「病気じゃないんだからいいのよ。治ったら戻ってくるわよ」
二年生の中には察しのいいものがいて、「あ、そう」とだけ言ってそれ以上は触れなかった。ほとんどが不思議そうな顔をしたままだったが。
そのときだった。
それまでは一言も発しなかった翼がいきなり立ち上がって走り出したのだ。
「翼!?」
ゆかりが翼が走る方向へ慌てて振り返ると、早苗が校舎に寄りかかるようにしゃがみこむのが見えたのだ。
「早苗!?」
校舎に入れば少しは涼しくなって体が楽になるかもしれない。
でも、なんだろう。この寒けは。
汗が流れる。
それなのに寒い。
お腹……痛い。
気持ち悪い。
吐きそう。
「はぁ、はぁ…きもち…わる…」
あと少しでたどり着くのに。
ズキン、と下腹部にひどい痛みがはしる。
「いっ……」
お腹をおさえて、とうとうしゃがみこんでしまう。
「も…いや……」
こんなとき思う。
どうして女の子なんだろう。こんな痛みなくなってしまえばいいのに。
辛くて、泣きそうになる。
それでも我慢するしかないのだ。
ちょっとだけの間だ。すぐに痛みは治まる。
痛みが治まったら歩いていこう。
早くゆかりを手伝わなくちゃいけない。
そう思ってなんとか壁に手をついて立ち上がろうとすると、ふわっと体が浮き上がった。
「え?」
「大丈夫?マネージャー」
「つばさ…くん…」
見上げると翼が心配そうに見ていた。
驚いた拍子に目尻から涙が零れる。
それを見た翼が真剣な顔をして前を向いた。
「もう少し我慢して。すぐ連れて行くから」
「え、あ、あの…」
翼は早苗をお姫さま抱っこした状態で校舎に向かって歩き出した。
一瞬、自分がどんな状態になっているのか忘れかけた早苗だが、再び鈍い痛みが腹部を襲う。
「っ…」
ぎゅっと目を瞑ってすがりつくように無意識に翼のシャツをつかむ。
「も…いや……おんななんて…やだ…」
「そんなこというなよ…」
体から伝わる優しい響きに早苗はゆっくりと翼を見上げた。
「おれ、困るからさ…」
その言葉を聞きながら早苗は意識を手放した。
「もう大丈夫みたいね」
保健室の先生は早苗の様子を見て微笑んだ。
「辛いと思ったら休みなさいね。無理したっていいことないんだから」
「はい」
保健室で痛み止めをもらい、しばらく眠っていたら下腹部の痛みは治まっていた。体は少しだるいが気分が悪いのもなくなっていた。
「あとで翼くんにお礼言っておかなくちゃね。あなたを抱きかかえてきたときは少し慌ててたけど、カッコよかったわよ~。さすが男の子ね」
「あ、は、はい…」
そうだった。
ここまで翼に連れて来てもらったのだった。途中から意識がなかったのだが、あまりの辛さに変なことを言ったような覚えがある。
しかもどさくさにまぎれて翼にしがみついていたような…
「翼くんに謝らなくちゃ…」
早苗の体調の事情を知ってしまっただろう。
顔を合わせるのも恥ずかしいのだが、そういうわけにもいかない。
「あ、マネージャー」
「具合よくなったのか?」
急いで校庭に戻ったものの、練習はもう終わってしまったらしく、水飲み場に石崎たちが集まっていた。
特に突っつくような言葉はなく、ただ体調を心配するような様子にホッとする。
あまり突っ込まれても恥ずかしいだけだし、向こうも同じなのかもしれない。
「う、うん…大丈夫。ごめんね、みんなに迷惑かけて」
「いや、いいけどよ。マネージャーはもう一人いることだし」
「翼が心配してたぜ」
「あ、うん…」
「ちゃんと安心させてやれよー」
ひやかされるように言われて早苗は部室に向かった。
翼は部室の前にいた。タオルを首にかけてストッキングをずらしている。
「翼くん」
「マネージャー」
翼は椅子から勢いよく立ち上がった。
「具合はどうなの?」
「え、あ、うん…もう大丈夫。ごめんね、迷惑かけて…」
早苗は俯いていた顔をあげると、翼はじっと見つめていた。
「あ、あの…」
「よかった」
翼は安心したように微笑んだ。
「顔色、さっきよりもずいぶんよくなってる。さっきは真っ青っていうより真っ白になってたから、おれ慌てちゃったよ」
「もう平気だから。あの…さっきは本当にありがとう。ごめんね、わざわざ保健室まで…重かったでしょう?」
「そんなことないよ。思ってたよりはずいぶんと軽かったから」
「思ってたよりは…?……って、翼くん、それどういう意味かしら」
「え?いや、その、人一人抱えるのって大変かと思ってたんだけど、意外とやってやれないことはないっていうか…うん、つまりマネージャーが軽かったからできたっていうことで…」
「…そういうことにしておきましょうか」
言い訳とかあまりしない翼の弁解の仕方が妙に可愛くて、早苗はクスリと笑った。
「でも、本当にありがとう。あの…それで、あのときなんかめちゃくちゃなこと言ってたけど、気にしないでね」
「あ、うん…」
本当は聞きたかった。
―おれ、困るからさ…
どういう意味?
そんなこと言われても困るってこと?
それとも…
「翼くん?」
「あ、起きた?」
ソファに寝かせようとしたところで早苗が目を覚ました。
「あ、私寝てた…?」
起き上がろうとするので手を貸すと、早苗は翼を見上げて微笑んだ。
「おかえりなさい」
「ただいま」
最近、ちょっと眠いの、と早苗は軽く伸びをする。
睡眠不足というわけではなく、体が睡眠を欲しているのだろう。
目を覚まさせるために冷蔵庫からオレンジ100%のジュースをグラスに注いで差し出す。
「ありがとう」
早苗は一口飲むとクスッと笑った。
「さっき思い出しちゃった。翼くんが私を初めてお姫さま抱っこして運んでくれたときのこと」
「ああ、中二のときの」
ちょうどそのときのことを思い出していたので、すぐに反応する。
「お姫さま抱っこしてもらえて嬉しかったんだけど、あのときはもう顔から火が出そうなほど恥ずかしかったのよね」
「おれはどうしようどうしようって慌ててたなぁ」
「そういえば…」
「ん?」
翼は早苗の隣に腰をおろす。
「翼くん、あのとき『困る』とかなんとか言ってなかった?」
「え?ああ、たしか早苗ちゃんが『女なんて嫌』とか言ったから、それはやだと思ったんだけど」
「どうして?」
「え…それは、だから……決まってるじゃないか」
「ん?」
翼はわかるだろう?というように早苗を見るが、彼女はちゃんと言ってというように首を傾げて覗き込む。
「早苗ちゃんは女の子のほうがいいって、ただそれだけだったんだよ―――」
そのあとの出来事も思い出した。
カーテンの奥から出てきた養護教諭は翼に微笑んだ。
「痛み止めの薬を飲んだから、しばらく休んでおけば大丈夫だと思うわ。ご苦労様、大空くん」
「いえ」
「全国優勝二連覇もしたチームのマネージャー業も大変だと思うわ。本人が思ってるよりも疲れてるのかもしれないわね。あれだけの大人数を、今は二人でサポートしているんでしょう? 大事にしてあげてね、キャプテン」
「……はい」
本当にその通りだなと思った。
保健室を出て校庭へ戻る。
ちょうど休憩が終わりかけたところだった。
ゆかりが翼に気づく。
「あ、翼くん! 早苗は……」
「先生が痛み止めを飲ませてくれたから、しばらく寝てれば大丈夫だって」
「そう」
ゆかりはホッとした表情になると、クスリと悪戯っぽく微笑んだ。
「ありがとう、翼くん。まさかお姫様抱っこして連れて行ってくれるとは思わなかったけど」
「え? あ、いや、少しでも早く連れていったほうがいいと思っただけだよ」
肩を貸すとかでは遅い。早苗を歩かせるよりも自分が連れて行ったほうが早いと思ったからだ。
今朝、顔を合わせたときから少し元気がないなと思っていたのだ。
真っ黒に日焼けしている翼たちほどではないが、健康的に焼けている肌が白く見えた。
それでも笑顔だったから大丈夫なのだろうと思っていたのだが。
事情はわかったが、女の子ってあんな風になるものなのかと初めて知った。
思春期といっても、それがピンとこなかったというのもある。
けれど、抱き上げた早苗の体は細くて柔らかくて、サッカーの試合で当たる男子の体とはまるで違っていた。
こんな細い体でいつも自分たちを助けてくれているのだ。養護教諭の言うとおり、大事にしなければと思う。
過保護にしすぎてはきっと怒るからやめておくけれど。
顔を洗いに水飲み場まで行くと、石崎達が集まっていた。
「おう、翼、マネージャーは大丈夫なのか?」
「うん。しばらく休ませておけばいいって」
「そっか。まあ、この暑さだもんな」
「いつも走り回ってるおれたちと違って、マネージャーたちのほうが体力ないだろうからさ。疲れもするだろ」
「西本もしんどそうだよ」
井沢や森崎は一年生を手伝わせてタオルやスポーツドリンクを片付けているゆかりを心配そうに見る。
「そうだ! 今度の日曜日は休みだろ。その前の土曜日の晩に神社で夏祭りがあるの知ってるか?」
石崎が言うと、来生が頷く。
「ああ、みんなで行こうって誘おうと思ってたんだよ」
「マネージャーたちも誘ってさ、日頃の礼も兼ねてかき氷くらいおごらないか? あいつらに」
「いいね、それ」
石崎の提案に翼は頷く。二人分のかき氷代くらいなら、皆で出しあえば一人分の負担はかなり少なくてすむ。
「それじゃ、マネージャーを誘うのはまかせたぞ、翼!」
「え?」
ポンと肩を叩かれ、翼は目を丸くする。
「マネージャーはさ、翼に誘われたら喜ぶと思うんだよな~」
「そうそう、きっと断らないだろうし」
「頼むぞ、翼!」
休憩終わりと言われ、石崎たちはグラウンドに走っていく。
「ちょっと、みんな!」
慌てて翼も追いかける。
困ったなと思いつつも早苗たちを誘わないとは考えなかった。
あの後、翼はマネージャーを夏祭りに誘ったのだけれど、祭当日に翼と早苗を二人きりにしようと仲間たちが奮闘するのだが、それはまた別の話である。
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