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管理人の日々徒然&ジャンルごった煮二次創作SSアリ
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ツバサナもあるにはあるんです。
なんか、今読み返すと文章おかしくて、直し始めたら止まらなくなりまして。

需要があるのかわからないけど、再び岬あづSSです。
好きなんだけどなぁ、私は。



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 いい天気だ。
 青空に白い雪をかぶった富士山がよく映えて見える。
「うわ~、今日はすごく綺麗に見える」
 あづみはずいぶんと温かくなった空気を吸い込んだ。
 
 部屋にもリハビリ室にも姿が見えず、職員に尋ねると外のベンチに座っていたのを見たというので、外に出てみる。
 目的の人物はすぐに中庭で見つかった。
 あづみの足音に気づいたのか顔をあげて微笑んだ。
「こんにちは」
「あづみちゃん」
 
 岬太郎は読んでいた雑誌を閉じて座っていたベンチの隣をさして座るように促す。
 
 あづみは東京の大学に通っていたが、時々静岡まできていた。
 リハビリをしている岬を見舞うためである。
 ワールドユース決勝から五ヶ月が過ぎていた。
 再び負傷してしまった左足の治療は終わり、走ることもできるようになった岬はサッカーの試合に出られるようになるためにリハビリを開始していた。
 
「今日はお休み?…あ、これ、おみやげ。みなさんで一緒に食べてね」
 手に持っていた東京の某有名菓子店の箱を渡した。
 以前、岬にこの店のマドレーヌをあげたときに「これおいしいね。気に入ったよ」と言っていたのを覚えていたので、それ以来おみやげはマドレーヌなのだ。実際、ここの職員たちにも好評らしい。
「ありがとう。休みってわけじゃないけど、今日はボクの担当の芝崎先生が出張でね。ボク一人でリハビリすると無茶しかねないから、先生が戻るまではトレーニングも禁止されてるんだ。ちょうどいいから少し休んだほうがいいって言われちゃって」
 岬は苦笑して肩をすくめた。
「私はよくわからないけど、たとえスポーツ選手っていっても、毎日練習しているわけじゃないんでしょう?一日くらいお休みしたっていいんじゃないかしら」
「うん、そうなんだけどね…。でも、ボクの場合は練習じゃなくてリハビリだから」
「あ、そっか…」
 岬が元気なだけに忘れがちだが、彼は怪我をしたからここにいるのだった。
 立って歩いている姿を見ると、どこも悪くなさそうに見えてしまうのでつい失念してしまう。
 でも、それは岬がそれほど回復しているということだ。
「よかったわ。もうすぐサッカーの試合にも出られそうね」
「それはどうかな…」
「えっ」
 もしかして、岬の怪我はサッカーが続けられないほど悪いのだろうかとあづみが思っていると、岬はあづみの考えを察したように笑った。
「心配はいらないよ。走れるようにはなったし、ボールも蹴れるけど、試合に出たときのように激しい運動はまだできないんだ。どこまで回復できるかわからないけど、やれるだけのことはやってみるつもりだよ。ありがとう、これもあづみちゃんのおかげだよ」
「え?」
「君がここを探してくれたおかげで、ボクは短い時間でもワールドユースに出場することができた。そして今だってこうしてまた試合にできるようにリハビリもできる。君に頼んで本当によかったよ」
 にこっと笑う岬をまぶしそうに見たあづみはふいに俯いた。
 
「私ね…。私も、ね、最初はこれで岬くんの足はよくなるって思っていたの。でも、あの決勝戦のあと…後悔したわ」
「…どうして?」
「もしも、あのまま岬くんが芝崎先生のことも知らずにずっと病院でリハビリを続けていたら、決勝戦に出ることもなくて、またひどい怪我をすることもなかったんじゃないかって…私が紹介したせいで、岬くんがまた怪我を…!」
 あづみはぎゅっと目を閉じて、スカートを握り締めた。
 ずっと謝ろうと思っていた。岬が再負傷する原因を作ったのは自分だと思っていた。岬のためと思っていたのに、彼がサッカーから遠ざかる原因を作ってしまったようなものだと。
「ごめんなさい。岬くん」
 そのあづみの肩に温かなものが触れた。
「あづみちゃん、気にしないで」
 岬はぽんぽんとあづみの肩を叩くと、ハンカチを差し出した。
「岬くん…」
「ボクは本当に感謝しているんだよ。もしもワールドユースに…決勝にも出られなかったら、ボクはずっと悔しい思いをしたまま、いつリハビリが終わるかわからない状態で苦しむことになったかもしれない。ほんの短い時間でも、あのピッチに立てたことがどんなに嬉しかったか…。だからボクはね、今だってちっとも後悔してないよ。君はボクの願いを叶えてくれたんだ。謝ることなんて一つもないんだ。本当にありがとう」
「ううん…」
 あづみは首を振った。
 確かに、あの決勝戦はたとえ怪我をしていようとも、岬は嬉しそうだった。怪我が痛まないはずはない。それでも楽しそうにプレイしていた。それがわかるから、これ以上謝ったら岬が気を悪くするかもしれない。
 受け取ったハンカチをありがたく使わせてもらう。
「…ハンカチありがとう。洗って返すから」
「別にいいのに」
「い、いいの!ちゃんと洗って返すから!」
「う、うん、わかったよ」
 あづみの勢いに押されたかのように岬はコクコクと頷いた。
「それじゃ、私、帰るわね」
 立ち上がったあづみに、岬は驚いたようにつられて立ち上がる。
「え、もう?」
「うん、今日は夕方からバイトがはいってるの。休めないから、そろそろこっちを出なくちゃ」
 東京から静岡まで来る電車代だってばかにならない。あづみがバイトしている理由はこの電車代を捻出するためでもあるのだ。
「じゃあ、バス停まで送っていくよ」
「えっ!?い、いいわよ。大丈夫!」
 あづみは遠慮するように慌てて手を振ったのだが、岬はおかまいなしとばかりに歩き出す。
「別にここから出ちゃいけないなんて言われてないし、せっかくここまで来てくれたのに送っていかないのも悪いからね」
 スタスタと歩いていく背中を呆気にとられたように見送ったあづみは慌てて追いかける。
 嬉しさに頬を緩ませながら。
 
「それじゃ、次に来たときに返すわね。ハンカチ」
「いつでもいいよ」
 岬はにっこりと笑うのだが、あづみは唇を尖らせる。
「鈍いんだからなぁ…もう」
「え?」
 ハンカチを返すだけなら、郵送だって構わないのだ。
 ここに来る口実が増えて大義名分ができたのが嬉しいあづみの気持ちなど察してくれてはいない。
「あ、バスが来たわ」
「あづみちゃん」
「何?」
「ホントにいつでもいいんだよ。ハンカチ」
「わ、わかったわよ」
 何を念押ししているのだろうか。絶対に忘れるつもりはないのだが。
 バスのタラップを昇ると岬の声が聞こえた。
「できることなら忘れてきてくれると嬉しいな。ボクが退院したあともね」
「え?」
 問い返そうとすると目の前でドアが閉まる。
 窓ガラスの向こうで微笑みを浮かべた岬が手を振った。
 手を振り返してからシートに座るとバスが動き始める。
 
 ハンカチを返すのはいつでもいいと岬はいった。
 しかも次に来たときには忘れてきてくれると嬉しい?
 忘れたら、また返しにこないといけないわけで…
 退院したあともって……ええっ?
 
 立ち上がってバスの後ろからバス停を見ると、走っていく岬の後ろ姿が見えた。
 ああもうあんなに走って…足、大丈夫なのかしら。
「そうじゃなくって!」
 
「どういうことよ…」
 
 それはどういう意味?
 
 もしかして、それは期待してくれているの?
 
「どうしようかな…」
 
 ねぇ、岬くん。
 もしも私が忘れずにあなたにハンカチを返したら、あなたはどんな反応をしてくれるのかしら?
 
 また、口実を考えてくれますか?
 
「ホントに返しちゃおうかな」
 
 でもたぶん、わざと忘れてきちゃうんだろうな…
 
 
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