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いろんな検索サイトからラノベの検索をかけて、当ブログにアクセスしてくる方がいらっしゃるみたいなのですが、このブログにはアクセスできないようになってます。
でもね、ラノベのタイトルだけでアクセスしてきても期待されるようなことは書いてないと思う。
感想とか、レビューとかだったら他ブログとか見たほうがいいよ、うん。
でも、二次創作を書いていたりして。
そういうわけで検索系からは来れないようになってるのです。
最近、私がはまっているラノベ「獣王子の花嫁」(コバルト文庫)の二次創作SSを書いてみました。
SSは続きからです。
思いっきりネタバレなので、せめて1巻を読んだ人でないと原作小説を読んだときにがっかりします。
いや、先に二次創作SSを読むんじゃなかったと後悔しますので。
ただ、ちょっと感想(?)というか超簡単なあらすじ。
内容的には甘い恋愛物というわけではないのですが、私好みの話です。
政略結婚で獣人族の王子に嫁いだ人間の姫の話。
(獣人というのは狼とか犬のような頭を持った人たちのことです。人間とは違う種族ってことです)
その輿入れの途中で、その花嫁は襲われてしまうのです。
そのとき助けてくれた護衛騎士と……
というような話。
では、「獣王子の花嫁」二次創作SSです。
ホントに1巻を読んでないとわからない内容ですから、注意してください。
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※くどいようですが、「獣王子の花嫁」1巻を読了してないとわかりません。
衛兵からの報告に、ラグドファルの王ダイングラムは床についていた長い尻尾をふわりと持ち上げた。
「人間の娘を連れているだと?」
あらまあ、と声をあげたのはそばにいた彼の妻だ。
持ち上げた尻尾を一旦床に下ろすと彼の妻と顔を見合わせ、首を傾げた。
「バルテアに送り返してくると言ってなかったか?」
「ええ、確かに言いましたわ」
彼らの七番目の息子ティークは自身の花嫁となるはずの人間の国の王女を送り返すために飛び出して行ったのだ。彼が出て行ってから、まだ二日と経っていない。
バルテア王国が所有する鉱山に侵入するムルム族を排除する協力を頼まれた見返りに、王の娘を息子の花嫁に要求したのはダイングラムだ。
そろそろ花嫁を迎えてもいい年頃になったティークだったが、精神的にはユフトの男子でも身体的には人間だ。さすがにユフトの娘と娶わせるわけにもいかなかったところへちょうどいい話が舞い込んできたと、かの国の王女を輿入れさせるように要求したのだった。
せっかくお膳立てしたというのに、妻を迎える気はない。国に送り返すと言って出て行ったはずが、何故人間の娘を連れているのか。
「気が変わった、ということかな?」
「まあ、あの子の気持ちを変えるなんて、どんな姫君なのかしら」
早く通せと申しつけると、ほどなく王の間に二人の人間と二人のユフトが入ってきた。
二人の人間のうち、一人は息子のティークだった。その傍らにはティークよりもさらに小さな人間の娘がいた。
黒髪に黒い瞳を持つティークとは違い、輝くような白金色の髪と澄んだ青空の瞳を持つ娘はその場にいるだけで華やいで見えた。
彼女は緊張しているのか、それとも獣人たちに囲まれておびえているのかはわからないが、強張った顔つきをしていた。
しかし、ティークに話しかけられると安心したように微笑む。
やはりティークと同じ人間だ。表情がわかりやすい。
その笑顔が思いのほか愛らしかったので、ダイングラムは彼女をおびえさせないようにつとめてゆっくりと謁見の座へ降りた。
* * *
着いて早々に王の間へ案内されることになり、サミュアは慌てふためいた。
「そんな、こんな旅装姿でお会いするなんて…」
失礼にもほどがあるとサミュアはせめて着替えさせてくれと頼んだが、ティークやお付きのユフトたちは気にしなくていいと言った。
「ここはユフトの谷だ。君がバルテアから旅してきたのは承知の上だ。よほどひどい身なりなら咎めもするが、君の服装なら問題ない」
「それに、早くとせかされているんだもの。お待たせするほうが失礼よ」
「そ、そうなのですか。わかりました。ではこのままで」
王の息子であるティークがこう言っているのだから大丈夫だ。そう自分に言い聞かせてサミュアは王の間へ向かうことにした。
案内された王の間はバルテアのものとは比較にならないくらい大きかった。
その中央の一番奥、王座に座る白銀の獣人の姿を見るとサミュアは知らず体が強張った。
「サミュア」
気遣うようにティークが声をかけてくれて、サミュアはそうではないと小さく首を振った。
「すみません。き、緊張してしまって」
ここまで旅をともにしてくれたクードやアネイラのおかげで、谷に住む獣人の姿を見ても恐れはしなかったが、王ともなれば話は違う。
恐怖ではなく、畏怖という気持ちのほうが強かった。
ユフトは人間よりもはるかに大きな体躯の持ち主だということは十分わかっていたが、そのユフトの王はさらに大きかった。
遠目から見てもかなりの巨躯だとわかる。
そして白銀の毛並みがとても美しく、なんて綺麗なのだろうと思った。
(この方がラグドファルの王)
王と呼ぶにふさわしい威風堂々とした居住まいに、サミュアは自然と緊張してしまったのだ。
自分がこの偉大なユフトの王の前に立ってもよいものなのかと。
ティークに手を引かれ、ゆっくりと前に進む。彼の手がなかったら、一歩も前に進めなかったかもしれない。
「サミュア」
ティークがはげますように優しく微笑んでくれたので、サミュアもほんの少しだが緊張が解けて頬が緩んだ。
そこへダイングラムが王座から立ち上がり、謁見の座へ降りてきた。
サミュアはびっくりして目を丸くする。
王が謁見の座へ降りてきてよいものなのか。サミュアの父、バルテアの国王は彼女が知るかぎり王座から降りてきたことなど一度もないはずだ。
「父上、ただいま戻りました」
「おかえり、ティーク。ずいぶんと早い戻りだったな」
親しげに話しているのを見るとやはり親子だ。王は息子を出迎えるために降りてきたのだろう。
ふわりと長い尻尾を持ち上げて揺らし、その瞳は愉しげに輝いていた。
からかうような声音にティークは軽く咳払いして話を変える。
「そのことについてはまた後ほど報告します。それで、彼女がその」
「バルテアの姫君だな?」
近くに寄られ、あまりの巨躯に圧倒されかけていたサミュアはその視線が自分に向けられて背筋を伸ばした。
軽く身を落として口を開く。
「初めまして、ラグドファルの王ダイングラム様。わたくしはバルテアの王女、サミュア=アルテアナ=オディマと申します」
「ようこそ、ラグドファルへ。ここまで来られるのは大変だっただろう。疲れてはいないか? とりあえず今はゆっくりと休むといい。食事の用意もさせよう」
「はい。ありがとうございます」
優しく話しかけられ、サミュアはホッとして微笑んだ。
「ティーク、おまえも少し休め」
「いえ、俺は大丈夫です。それよりもいろいろとお話しすることが」
まあ待て、とダイングラムは手をあげて止めた。
「おまえは旅から帰ってきて、またすぐに出て行ったのだから体を休めたほうがいい」
「ですが」
「姫君はここに着いたばかりでこの城にも不案内だ。知らないものに囲まれるよりは、慣れるまでおまえがそばについていてやったほうがいい。それに、姫の食事はおまえと同じものがいいのではないか? アネイラ?」
訊ねられた女性のユフトは頷いた。
「はい。姫様の食事はティーク様と同じでいいそうです。姫様の食事を作らせるなら、ティーク様もご一緒したほうがいいでしょう」
「だそうだ。話はその後でもいいだろう。どうせ姫にも訊かねばならないことは多くある」
「わかりました。では後でご報告にまいります」
「うむ」
「それでは料理ができる間に姫の部屋に案内したほうがいいでしょう」
声をかけられ、振り向いた先には飴色の美しい毛並みをしたユフトが立っていた。声からして女性のようだ。優雅に歩いてきたそのユフトはダイングラムの傍らに立ち、ティークに向けて穏やかに話しかけた。
「おかえりなさい、ティーク」
「母上、ただいま戻りました」
その会話にサミュアは目を瞬かせた。
この女性のユフトはティークの母親、つまりはダイングラムの妻で王妃なのだ。
「はじめまして、サミュア姫。私がティークの母のウェラです。よく来てくれましたね」
「はじめまして、王妃様」
サミュアは先ほどダイングラムにしたように挨拶した。
「よかったわ。急ごしらえだったけれど、姫の部屋を片づけてしまわなくて。婚儀が終るまでは姫にはその部屋で寝起きしてもらうことになるけどよかったかしら?」
「はい。お気遣いありがとうございます」
ウェラの言葉からも自分の輿入れは本当に急な話だったのだとわかる。それでもきちんと自分のために部屋を用意してくれいた。ティークはともかく、ダイングラムたちは第七王子の花嫁を迎え入れる準備をしてくれていたのだ。
それが嬉しくて笑顔になる。さすがティークが父、母と慕うだけの器の広さがあった。
サミュアの笑顔にダイングラムとウェラは目を瞬かせ、そしてつられるように笑顔になった。
「では、部屋に案内させよう」
* * *
ティークたちが王の間を出て行くと、ダイングラムは楽しそうに尻尾を揺らした。
「私、人間の娘を初めて間近で見ましたけど、なんて可愛らしいのかしら。あの白金色の髪! きらきらしているわ。それに礼儀作法も完璧。少しおとなしそうだけれど、ティークはああいう子が好みだったのかしら?」
「おとなしいだけではあの子が連れて帰ってくるなんてことはないだろうね。ティークも何か感じるものがあったんだろう」
でなければあの頑固な息子が折れるはずがない。
「そうかもしれないわね。それに、あの姫もティークのことを好いていてくれてるみたいだし。そのあたりの話を聞くのも楽しみね」
「そういうものかな?」
「そういうものなんですよ。殿方にはわからない話かもしれませんけどね」
妻は楽しそうに笑うとポンと手を打った。
「そうそう、花嫁を連れて帰ったのなら婚儀の準備を進めないといけないわね」
「ああ、そうだったな。盛大にしてやらねば」
「ええ、そうですとも」
たとえ養子といえど、ダイングラムにとってティークは大切な息子に違いない。
先に結婚した子どもたちと同じように皆で祝ってやらねばと思う。
はるばるバルテアからやってきた小さくて愛らしい花嫁のためにも―――
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原作を読み終えた方ならおわかりと思いますが、サミュアがユフトの谷に到着した直後の話です。